2010 Fiscal Year Annual Research Report
p63が制御する細胞接着因子の発現プロファイルと上皮-間葉転換
Project/Area Number |
20590380
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
倉田 俊一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (60140901)
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Keywords | p63 / SCC / EMT / invasion |
Research Abstract |
「目的」扁平上皮癌細胞の発症と進行におけるp63の機能を明らかにするため、RNA干渉法でp63をノックダウンし、発現プロファイルを解析するとともに、p63を誘導するシグナル伝達系と上皮-間葉転換(EMT)の関連を検討した。 「実施事項」ステージの異なる扁平上皮癌細胞株で様々な試薬や条件を検討し、siRNAのトランスフェクションによりp63のノックダウンを実施し、その細胞の遺伝子発現プロファイルの解析をいった。さらに明らかになった結果を基に市販の癌組織アレイを用いてp63とIKKαの発現に関して蛍光免疫染色を行った。 「結果」p63ノックダウンにより上皮細胞特異的に発現する種々の細胞接着因子(Claudin 1, Nectin, laminin等)および分化マーカー'(transglutaminase, cystatin A等)の発現が低下する一方、浸潤癌と関係する遺伝子(Matrix metalloproteinase-7 MMP inhibitor 2, TGF-β2, Inhibinβ等)が発現誘導され、マトリゲル浸潤アッセイなどの結果から、EMT様の変化がおこることが分かった。すなわち扁平上皮癌におけるp63の役割のうち、上皮形質を維持する機能が、遺伝子発現プロファイルにより鮮明にされ、これまでの知見が確認されるとともに、上記のような未報告の遺伝子群への影響が示唆された。さらに興味深いことに、IKKαが作用するケラチノサイト特異的なTGF-β経路によりp63が発現誘導を受けることを明らかにし、p63とIKKαの相互活性化とそれぞれの経路での遺伝子発現制御によって浸潤型への進行が阻止されることが強く示唆され、p63とTGF-βシグナル経路との相互作用を世界で初めて明らかにした。
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