2008 Fiscal Year Annual Research Report
レチノイン酸代謝酵素CYP26A1は,癌治療の新しい標的となり得るか?
Project/Area Number |
20590402
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
小山内 誠 Kochi University, 教育研究部医療学系, 准教授 (60381266)
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Keywords | ビタミンA / レチノイン酸 / 癌 / アポトーシス / CYP26A1 |
Research Abstract |
ビタミンA欠乏と癌化の関連性は疫学的に古くから指摘されているが、その分子機構の詳細は不明である。ビタミンAの生理活性体であるレチノイン酸は、細胞の増殖、分化、アポトーシスなどの基本的生命現象を特異的に制御する内因性物質である。一般に、癌細胞ではアポトーシスシグナルと生存シグナルの不均衡が存在するが、アポトーシス感受性の低下は、癌をはじめとする病的状態と直結する細胞機能異常である。平成20年度までに、我々は、レチノイン酸代謝酵素CYP26A1の発現充進に伴う細胞内のレチノイン酸量の減少が、癌細胞のアポトーシス感受性を著明に低下させる分子機構を解明した。また、CYP26A1は広範な癌組織で非調節性の高発現が見られ、CYP26A1の過剰発現に伴う腫瘍内微小環境でのレチノイン酸不足が腫瘍細胞の悪性形質の獲得と密接に関連する、との新たな知見を得つつある。この成果は、1925年に提唱されたビタミンA欠乏と癌化の関連性を説明し得る分子基盤として重要であり、細胞単位でのレチノイン酸欠乏と腫瘍細胞の悪性形質獲得の機能的関連性を証明するものである。また、平成21年度以降実施予定の研究計画であるCYP26A1の非調節性高発現の分子機構の解明に向けたCYP26A1プロモーターの解析や、CYP26A1による癌細胞の形質変化に伴う分子機構の網羅的な解明は、CYP26A1を標的とする創薬研究の基盤的情報となり得るものと自負している。
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