2008 Fiscal Year Annual Research Report
癌転移の多様性に対応するモデルの作製と分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
20590406
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
杉野 隆 Fukushima Medical University, 医学部, 准教授 (90171165)
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Keywords | がん転移 / 浸潤 / 遺伝子導入 / マウス乳がんモデル / anoikis |
Research Abstract |
1.がん転移を制御する分子の同定とメカニズムの解明:マウス乳癌高・低転移細胞を用いた遺伝子発現の解析によりクローニングされた転移関連分子の転移誘導性を確認した。“gene1"は遺伝子導入により転移性を誘導した。高発現細胞はin vitroで細胞質突起を形成せずmatrige1への浸潤性や運動性が減弱した。"gene2"は新規の細胞外基質蛋白をコードする遺伝子である。この蛋白は細胞と基質の接着を阻害し、細胞を浮遊させる性質を有していた。今後、これらの分子と転移との関与を明らかにする予定である。 2.転移モデルの作製:がんの臓器特異性転移に関わる分子機構を明らかにするためにマウス乳癌細胞を用いて肝、肺、リンパ節へ高転移する細胞の選別を試みた。今年度は肝に高度に転移する細胞HM-KANを樹立することができた。細胞の樹立方法は、1)マウス乳癌細胞株MCH66-HM-Pをマウスに同所移植後肝を摘出し、転移細胞を培養する。2)樹立した細胞(HM-KAN1)を再びマウスに移植して転移細胞を採取する、という操作を5回繰り返してHM-KAN5を得た。選別した細胞の肝への自然転移能は3代目以降、有意に増加した。移植4週後の観察では肝類洞内に数個の癌細胞が塞栓する初期転移巣を認めた。初期転移巣の数はHM-PとKAN1-5の間に差を認めなかったが、HM-Pの転移巣には炎症細胞が動員され癌細胞の多くが細胞死に陥っていた。このことからこの細胞系で亢進した肝転移能は肝における細胞の生存と増殖によると推定された。In vitroではHM-Pがシート状に増殖したのに対し、HM-KAN1-5はpile-upし、さらに浮遊してanoikis抵抗性を示した。これらの細胞は乳癌の予後に重要な肝転移のモデルとして有用であると考えられる。現在、これらの細胞における発現遺伝子の差異を3D-Gene Mouse Oligo chip(TOYOBO)を用いて解析中である。
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