2009 Fiscal Year Annual Research Report
癌転移の多様性に対応するモデルの作製と分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
20590406
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
杉野 隆 Fukushima Medical University, 医学部, 准教授 (90171165)
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Keywords | 癌 / 転移 / 実験モデル / 腫瘍血管 / Semaphorin 3B / マウス乳癌 / 浸潤 |
Research Abstract |
本研究はがん転移の多様性を正しく認識して分類し、各々に関連するメカニズムを明らかにして適切な治療に結びつけることを目的とした基礎的研究である。転移の多様性は1)転移様式(浸潤依存性・非依存性)、2)転移標的臓器の違いによるところが大きい。平成21年度は1)前年度にクローニングした浸潤非依存性転移関連遺伝子の機能を明らかにすること、2)前年度に樹立した肝転移細胞に加え、種々の臓器に転移しやすいがん細胞のクローンを選別することを目標とした。 1) 浸潤非依存性転移に関わる遺伝子の機能解析:マウス乳癌高・低転移細胞の遺伝子発現の解析によりクローニングした3個の分子の機能を解析した。Molecule 1 (Semaphorin 3B)は遺伝子導入により転移性を増強した。高発現細胞はmatrigelへの浸潤性や運動性を減弱した。Molecule 2は細胞外基質蛋白として培養皿に沈着し、細胞と基質の接着を阻害しanoikis抵抗性を増強する。Molecule 3は細胞膜に局在するカルシウム結合タンパクである。免疫染色によりこのタンパクを高発現する乳癌症例は有意に予後が悪いことが明らかとなった。 2. 転移モデルの作製:がんの臓器特異性転移に関わる分子機構を明らかにするために、すでに樹立した浸潤非依存性細胞株MCH66-HMからsingle cell cloning法を用いて転移性の異なるクローンの選別を試みた。多数のクローンをマウス乳腺内に同所移植して転移性を検証し、低転移性クローン、肺または肝特異的転移クローン、全身臓器高転移性クローン、高浸潤性クローンなどを得た。また、浸潤非依存性転移の発生母地となる類洞状腫瘍血管形成が高度なクローンと全く伴わないクローンが得られ、このタイプの転移メカニズムの解明において有用なモデルであると考えられる。
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