2010 Fiscal Year Annual Research Report
癌転移の多様性に対応するモデルの作製と分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
20590406
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
杉野 隆 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (90171165)
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Keywords | 癌 / 転移 / 浸潤 / S100A14 / 乳癌 / RNAi |
Research Abstract |
本研究は癌転移の分子機構解明とその制御を目指している。今年度は1)invasion-independent pathwayに関わる分子を明らかにするために昨年度クローニングされた転移関連候補遺伝子について、実験的な手法と臨床病理学的な手法を用いて解析を行う、2)癌転移の臓器特異性に関わる分子機構を明らかにするために昨年度作製した肝、肺に高頻度に転移する細胞を用いて臓器特異的転移に関連する遺伝子のスクリーニングを行う、という2項目を目標とした。 その結果、カルシウム結合タンパクであるS100A14が新たな癌のバイオマーカーとなり得ることが明らかとなった。S100A14の発現を分子特異的なRNAiを用いてノックダウンすることによりマウス乳癌の転移が抑制された。また、ヒト乳癌症例を用いた免疫組織化学的解析により、S100A14の発現と乳癌患者の予後が有意に相関することが明らかとなった。本研究によりその分子メカニズムが明らかになればこの分子を用いた乳癌の予後予測診断が可能となり、さらにS100A14分子をターゲットとした分子標的治療への応用が期待できる。 また、肝特異的転移細胞を用いて肝転移をコントロールする細胞形質と関連遺伝子の同定を試みた。本研究で作製した肝転移性・非転移性クローンを乳腺内注入、尾静注、左心注、肝内直接注入など種々のルートで移植した結果、肺転移巣から肝への移動、特に腫瘍内微小環境の差が大きく関与することが明らかとなった。また、microarrayを用いた発現遺伝子のdifferential screeningにより新規の分子やシグナル伝達系の関与が推定されている。本モデルは希少な乳癌の肝転移モデルであり、そのメカニズム解明や転移の予防・治療の開発に有用と考える。
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Research Products
(11 results)