2008 Fiscal Year Annual Research Report
病原性原虫における含硫アミノ酸分解酵素の生理的役割と反応メカニズムの解明
Project/Area Number |
20590429
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 暖 Keio University, 医学部, 助教 (50468477)
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Keywords | 原虫 / 創薬開発 / アミノ酸代謝 |
Research Abstract |
赤痢アメーバ原虫は、含硫アミノ酸をαケト酸・チオール・アンモニア分解する酵素・メチオニンγ-リアーゼ(MGL)を持つ。本酵素はヒトには存在しないため、優れた創薬標的になると期待される。赤痢アメーバ原虫は基質特異性の異なる2種類のMGLを持つが、その生理学的役割はよく分かっていない。研究代表者らは抗アメーバ薬を開発するため、MGLの反応メカニズムを立体構造レベルで明らかにすべく研究を進めている。一昨年、研究代表者らはそのうちの一方の結晶化に成功した(解像度2.0Å)が、今年度、もう一方の結晶化(解像度1.8Å)に成功してその成果を発表した。現在、両者の基質特異性の違いを立体構造レベルで説明できるか、補酵素及び活性中心を詳細に比較している。また、反応メカニズムを詳細に理解するため、反応中間体の結晶化を試みたところ、MGLとメチオニンの複合体を、反応時間を変えて結晶化することに成功した。現在、その解析を進めている段階である。 MGLの生理学的役割を明らかにするため、MGLに関連した代謝産物(基質や産物など)をメタボロミクスの手法で観察した。全ゲノム配列から、赤痢アメーバ原虫はピルビン酸や2-オキソ酪酸からATPを産生する経路があり、MGLはそこに2-オキソ酪酸を供給するために機能するという説があるが確認できなった。しかし、ピルビン酸はこの経路には流れないことから、MGL2が-オキソ酪酸を産生して間接的にATP合成に関与する可能性は否定できない。また、赤痢アメーバ原虫は、植物と異なり、メチオニンの分解で生じたチオールをS-メチルシステインに代謝しないことが判明した。無機硫黄からエネルギーを使ってシステインを合成する経路を持つ一方で、そのまま放出するのは無駄に見えるので、何らかの形で硫黄をリサイクルしていると考えられる。今後、これらの点をフラクソーム解析で明らかにする予定である。
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Research Products
(6 results)