2009 Fiscal Year Annual Research Report
病原性原虫における含硫アミノ酸分解酵素の生理的役割と反応メカニズムの解明
Project/Area Number |
20590429
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 暖 Keio University, 政策・メディア研究科, 助教 (50468477)
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Keywords | 原虫 / 創薬開発 / アミノ酸代謝 |
Research Abstract |
私たちは、含硫アミノ酸分解酵素メチオニンγ-リアーゼ(MGL)を標的とした抗アメーバ薬の研究を行っている。メチオニンの類似体であるトリフルオロメチオニン(TFM)はMGLによって分解されて殺アメーバ作用をもつことが分かっている。TFMはヒトでは代謝されにくいことから優れた薬剤になると期待される。TFMの有効性を上げるため、TFMを誘導体化して殺アメーバ作用を検討した。酵素学的性質や結晶構造から、TFMのカルボキシル基なら官能基の導入が可能であると判断し、そこに様々な官能基をつけた誘導体を作製して抗アメーバ作用を検討した。その結果、いくつかの化合物が既存の薬剤より優れた有効を示した。TFM誘導体の作用メカニズムを明らかにするため代謝過程を調べたところ、TFM誘導体はアメーバのプロテアーゼのはたらきでいったんTFMに変換されたのち毒性を示すと予想された。これらのことは今後の抗アメーバ薬の開発に役立つと考えられる。 MGLは、酵素学的特異性が際立っているにもかかわらず、生理学的役割はよく分かっていない。それを明らかにするためMGLに関連した代謝産物をメタボロミクスの手法で観察した。赤痢アメーバ原虫は無機硫黄からエネルギーを使ってシステインを合成する経路を持つ一方で、MGLのはたらきで生じたチオールはそのまま体外へ排出されている。これはエネルギーの無駄に見えるので何らかの形で硫黄をリサイクルしていると考えられる。同位体標識されたメチオニンやセリンをアメーバに与えて代謝過程を詳細に解析したところ、メチオニンの分解で生じたチオールは、セリン由来の代謝産物と結合してS-メチルシステインになり、その量はシステイン欠乏下で増加することが判明した。今後S-メチルシステインがどのように代謝されるのか明らかにする予定である。
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