2009 Fiscal Year Annual Research Report
一酸化窒素のヘリコバクター・ピロリ感染後の胃十二指腸病変発症における役割
Project/Area Number |
20590455
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
神谷 茂 Kyorin University, 医学部, 教授 (10177587)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 一酸化窒素 / 感染 / 胃炎 |
Research Abstract |
血管拡張作用、突然変異作用、炎症惹起作用、発癌作用、免疫調節作用、抗微生物作用など多彩な活性を有する一酸化窒素(Nitric Oxide : NO)とHelicobacter pylori感染との関連性についてスナネズミ感染モデルを用いて検討した。食餌中の硝酸塩(nitrate)は消化管より吸収され、血流に入り、唾液腺により濃縮され口腔内に分泌される。口腔内の細菌による還元作用により亜硝酸(nitrite)に変換され、胃酸下でNO生成が行なわれるため、NO供給源として飼育用飲料水にnitrateを1mmol/kgあたりに添加した。スナネズミへのnitrate含有水投与がH.pyloriの胃内定着性、炎症発現性などにどのような影響を及ぼすかについて解析した。H.pyloriTK1402株をスナネズミに経口感染させ3ヵ月後に、定着H.pylori菌数、血漿中、胃液中、胃粘膜中のnitrate量およびnitrite量、病理学的所見を評価した。 Nitrate投与群および対照群(蒸留水投与群)での定着H.pylori菌数はいずれも10^4 CFU/g mucus以上を示し、nitrate投与群において低値であったが、両者に統計学的有意差は認められなかった。Nitrate投与群の血漿、胃液および胃粘膜中におけるnitrate量およびnitrite量は、対照群に比べ有意に高値を示した。病理学的解析の結果、nitrate投与群では対照群に比べ炎症スコアおよび胃腺拡張の低下が認められた。 本研究より胃粘膜内に生成されたNOは胃粘膜内に持続感染するH.pyloriの増殖を抑え、除菌する作用は見られなかったものの、定着菌数を抑える効果が認められた。加えてnitrateの投与はH.pylori感染に伴う炎症スコアおよび胃腺拡張の低減化が認められた。これらの実験結果はrutrateを含む食品の摂取がH.pyloriの胃粘膜に対する感染効果を減弱化させる可能性を示唆しており、今後の更なる検討が必要となる。
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Research Products
(20 results)