2008 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス学的シナプスを介したHTLV-1感染機構の解明
Project/Area Number |
20590468
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
樋口 雅也 Niigata University, 医歯学系, 講師 (50334678)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
ヒトT細胞ウイルス1型(HTLV-1)は細胞間接触を介して感染・伝播する。本研究ではHTLV-1の細胞間感染伝播の分子メカニズムを、宿主細胞のシナプス形成装置を利用した細胞内侵入(ウイルス学的シナプス)という観点から明らかにすることを目的としている。我々は細胞間シナプス形成に重要である細胞極性因子Dlg1の機能に着目した。HTLV-1感染細胞株および非感染細胞株を用いてDlg1ノックダウン細胞を作製し、混合培養を行ったところ、HTLV-1感染による合胞体形成がDlg1ノックダウン細胞では顕著に低下した。この結果よりDlg1がHTLV-1の細胞間感染に深く関与していることが明らかとなった。HTLV-1はターゲット細胞表面に発現するGLUT-1に吸着することにより感染するが、293T細胞においてGLUT-1とDlg1の局在を検討したところ、両者は特に細胞接着面付近で共局在していた。GLUT-1はそのC末端にPDZドメイン結合領域(PBM)をもつ。PBMを欠失したGLUT-1変異体をGLUT-1発現のないMDBK細胞に導入し、HTLV-1感染細胞と混合培養することによりHTLV-l感染効率を検討した。野生型GLUT-1導入細胞ではHTLV-1感染による合胞体形成が多数みられたが、変異GLUT-1ではこの活性は顕著に低下していた。GLUT-1とDlg1が共局在を示すことから、Dlg1は自身のPDZドメインを介してGLUT-1と結合し、細胞間シナプスへのGLUT-1の集積を促していることが予想されたが、免疫沈降およびプルダウン法においてもGLUT-1とDlg1の結合は認められなかった。このことからDlg1は間接的にウイルス学的シナプスにおけるGLUT-1の機能を調節している可能性があると考えられる。
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