2010 Fiscal Year Annual Research Report
レトロウイルスゲノム二量体化及び組換えの分子機構と責任因子の探求
Project/Area Number |
20590471
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻木 淳一 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (90273705)
|
Keywords | HIV / RNA / ゲノム二量体化 / 逆転写 / 組換え / ウイルス / 粒子成熟 |
Research Abstract |
本研究において研究代表者は、HIVの様々なサブタイプやその他のレトロウイルスにおけるゲノム二量体化とゲノム組換えについて包括的な解析を行うことで、これらの事象の機序あるいはこの二機能の相関の一般則を導き出し、それらを制御しているシス・トランス因子の検索を行うことを目的とした。当該年度においては、未だ不明な点が多く残されているHIV-1粒子成熟過程とウイルスゲノムの関係について解析を試みた。 粒子成熟はHIV-1Gag内の5つの切断点がウイルスプロテアーゼによってプロセシングされることによって起こるが、成熟過程は斉一なものではなくいくつかの隣階が存在していると考えられる。我々は粒子成熟過程が中途段階で停止状態になる一連の変異体を作成し、これらの変異体を用いて、粒子成熟過程におけるゲノム二量体化、また粒子形態の変化についての観察を行った。粒子成熟過程においてはGagの最初の切断点であるp2-NCの切断によりゲノム二量体の安定化が一気に起きるがそれは十分ではなく、引き続いて起こる蛋白成熟によって多段階の中間体形成を経て均一で安定した二量体が完成することが示唆された。各変異体の粒子形状観察の結果、ゲノム二量体化にはウイルスコアの形成は必要なく、粒子成熟に伴う形態変化とゲノム二量体化の間に必ずしも明確な同期は見られなかった。ウイルス粒子内のゲノム逆転写能力はp2-NC切断により十分に獲得されたが、細胞への感染にはNCの完全な成熟が必要であった。 Gagの切断によりゲノム二量体化が起こることは知られていたが、今回の解析によりこの二つの多段階のステップは同期しつつ進行するものの、各々の転換点は完全には一致していないという興味深い知見が得られた。また、感染能解析からは、ウイルスRNAの成熟が逆転写以外の感染過程にも重要な役割を担っている可能性が示唆された。今後変異体の感染能のさらなる解析などを通じてウイルス粒子成熟過程のより深い理解につなげていきたい。
|