2008 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルスゲノム動態を制御する宿主因子の探索と機能解析
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20590473
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
有海 康雄 Okayama University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (60303913)
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Keywords | C型肝炎ウイルス / 宿主因子 / DNA損傷センサー / ATM / 亜ヒ酸 / PML / 酸化ストレス / グルタチオンレドックスシステム |
Research Abstract |
(1)DNA損傷センサーであるATMあるいはChk2をノックダウンしたHuH-7細胞において、全長HCV-0株およびサブゲノムレプリコンのRNA複製が顕著に抑制されることを見出した。一方、ATRキナーゼやPARP-1をノックダウンした細胞では、コントロールと同程度のHCV RNA複製がLightcycler PCRやコロニー形成アッセイ法により、確認できた。また、感染性HCV-JFH1ウイルスをATMあるいはChk2ノックダウン細胞に感染させても、感染4日目の細胞内HCV RNA複製レベルと培養上清中に放出されるHCVコア蛋白質の量が顕著に減少した。さらにATMキナーゼ阻害剤を作用させるとHCV RNA複製レベルが顕著に抑制されたので、新規抗HCV剤としての有用性が期待された。免疫沈降実験や共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞内局在の解析結果、ATM及びChk2はHCV NS5Bと相互作用することが判明した。 (2)最近、急性前骨髄球性白血病の治療薬として使用されている亜ヒ酸がHIV-1の感染性を増強させることが報告された。そこで、亜ヒ酸を用いて抗HCV効果を検討した結果、HCV RNA複製レベルが1uM以下の低濃度において細胞毒性もなく顕著に抑制された。次に亜ヒ酸による抗HCV効果の作用メカニズムについて検討した。亜ヒ酸はPMLの分解を促進することが知られているので、先ず、亜ヒ酸による抗HCV効果にPMLが関与するのかどうか検討した。亜ヒ酸をHCV RNA複製細胞に作用させ、PMLの細胞内局在を観察すると、未処理の細胞ではPMLはPML nuclear bodyに局在していたが、亜ヒ酸処理細胞ではPMLが細胞質へ移行していた。しかしながらPMLノックダウン細胞に亜ヒ酸を作用させても、コントロール細胞と同定程度の抗HCV効果が認められたので、亜ヒ酸による抗HCV効果にはPMLは関与していないことが判明した。一方、FACS解析により、亜ヒ酸処理細胞では、細胞内H2O2レベルはコントロールに比べ、変化は見られなかったが、スーパーオキサイドの増加が観察された。亜ヒ酸処理細胞では、細胞内のグルタチオンレベルも減少していた。さらに細胞を抗酸化剤N-アセチルシステインで処理すると、亜ヒ酸による抗HCV効果を完全にキャンセルした。以上の結果より、亜ヒ酸による抗HCV効果には、酸化ストレスと細胞内グルタチオンレドックスシステムが関与していることが示唆された。
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