2009 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルスゲノム動態を制御する宿主因子の探索と機能解析
Project/Area Number |
20590473
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
有海 康雄 Okayama University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (60303913)
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Keywords | C型肝炎ウイルス / 宿主因子 / ESCRT小胞輸送システム / shRNA |
Research Abstract |
【目的と意義】C型肝炎ウイルス(HCV)はエンベロープを保持するRNAウイルスに属しているが、これまで細胞培養系で効率良く感染性ウイルス粒子を産生することが容易でないため、HCVの生活環、特にウイルス粒子形成や出芽に関与する宿主因子やその分子機構については、あまり解析が進んでいない。今回、我々はレトロウイルスなどエンベロープを保持するウイルスの出芽に必要なESCRT (Endosomal Sorting Complex Required for Transport)小胞輸送システムがHCV産生にも関与するのかどうかについて検討した。 【材料と方法】Short hairpin (sh) RNAを発現するレンチウィルスベクターを用いて、ESCRT関連因子TSG101、Alix、Vps4B或はCHMP4bをノックダウンさせたHuH-7由来RSc細胞株を樹立し、HCV-JFH1株を感染させ、感染細胞内のHCV RNAの複製レベルと培養上清中に分泌されるcoreの発現量をそれぞれReal-time RT-PCR法とELISA法で定量した。さらに免疫沈降法や免疫蛍光抗体法により、ESCRT関連因子と相互作用するHCVタンパク質の同定を試みた。 【結果】TSG101、Alix、Vps4B或はCHMP4bをノックダウンした細胞にHCV-JFH1を感染させた結果、細胞内のHCV RNA複製レベルにはそれほど影響しないものの細胞培養上清に放出されるHCV coreの量が激減していることを見出した。次に、共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞内局在を観察した結果、HCV coreがCHMP4bと共局在することが判明した。さらにHCV-JFH1感染細胞を用いた免疫沈降法により、HCV coreとCHMP4bとの相互作用が確認された。 【考察】今回の我々の結果より、HCV粒子産生には脂肪滴のみならず、ESCRT小胞輸送システムも関与していることが示唆された。興味深いことに既にレトロウイルスで報告されているウイルス粒子の出芽に必要なウイルス因子側のL-domainモチーフはHCVには保存されていないので、新規なウイルス粒子出芽に関与する機構の存在も示唆された。
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