2010 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルスゲノム動態を制御する宿主因子の探索と機能解析
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20590473
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
有海 康雄 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (60303913)
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Keywords | C型肝炎ウイルス / P-body / 発がん関連因子 / DDX6 / microRNA / ESCRT / RNAウイルス / 脂肪滴 |
Research Abstract |
C型肝炎ウイルスゲノム動態を制御する宿主因子の探索と機能解析することを目的として実験を行い、以下のような成果を得た。 (1)発がん関連因子とHCVのクロストーク 共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞内局在の解析の結果、HCV-JFH1感染によりP-body形成が阻害され、P-bodyに蓄積していた発がん関連因子DDX6、Lsm1、Xrn1、Ago2及びPATL1などのmicroRNA effectorがHCVウイルス産生の場である脂肪滴周辺にハイジャックされ、HCV Coreと共局在することを見出した。一方、HCV感染により、decapping enzyme Dcp2のP-body形成は阻害されなかった。HCV感染12時間および24時間後の感染初期の段階では、まだP-bodyの形成が確認されたが、感染36時間後よりP-body形成の阻害が始まり、感染48時間後では顕著となった。この結果、HCV感染によるP-body形成阻害は感染後期にみられるイベントであることが判明した。さらにRNA干渉法により、DDX6をノックダウンしたヒト肝癌細胞株HuH-7由来RSc細胞にHCV-JFH1を感染させると、コントロール細胞に比べて、細胞内のHCV RNAレベル、細胞培養上清中に放出されるHCV Coreの量およびHCV粒子の感染性が顕著に減少していることが見出された。以上の結果より、P-body因子はHCVゲノム動態に必要な宿主因子であることが示唆された。 (2)感染性HCVウイルス粒子形成 HCVはエンベロープを保持するRNAウイルスに属しているが、これまで細胞培養系で効率良く感染性ウイルス粒子を産生することが容易でないため、HCVの生活環、特にウイルス粒子形成や出芽に関与する宿主因子やその分子機構については、あまり解析が進んでいない。今回、我々はレトロウイルスの出芽に必要なESCRT(Endosomal Sorting Complex Required for Transport)小胞輸送経路がHCVウイルス粒子産生に関与していることを見出した。RNA干渉法により、ESCRT関連因子であTSG101、Alix、Vps4B、CHMP4b、そしてBroxをノックダウンさせたRSc細胞にJFH1を感染させると、細胞内のHCV RNAレベルはほとんど影響されないものの細胞の培養上清中に放出されるHCV Coreの量は顕著に抑制された。また、その際のHCV粒子の感染性も顕著に抑制された。一方、細胞内のHCV粒子の感染性はコントロール細胞とノックダウン細胞とでは、ほとんど変わらないことが見出された。この結果、ESCRT因子はHCVのRNA複製やHCV粒子の組立てのステップにはあまり関与せず、HCVの粒子放出のステップに関与していることが示唆された。
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