2009 Fiscal Year Annual Research Report
核内ユビキチンリガーゼPDLIM2による炎症反応制御機構の解析
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20590499
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 貴志 独立行政法人理化学研究所, 炎症制御研究ユニット, ユニットリーダー (00415225)
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Keywords | 免疫学 / シグナル伝達 / アレルギー・ぜんそく / PDLIM2 / ユビキチンリガーゼ |
Research Abstract |
転写因子NF-κBは、炎症反応を開始する際の要となるシグナル伝達分子であり、このNF-κBの活性化のON/OFFをうまく制御することが、適切な炎症反応の進行に重要であると考えられる。申請者らは、核内蛋白PDLIM2が、NF-κBをユビキチン化・分解することにより不活性化することを明らかにした。本年度は、核内ユビキチンリガーゼの異常が個体レベルでの炎症性疾患の病態形成に関与する可能性について検討した。まず、PDLIM2欠損マウスを用いて皮膚創傷治癒の実験を行ったところ、PDLIM2欠損マウスにおいては創傷治癒反応が亢進していることが明らかになった。また、PDLIM2が転写因子Smad2/3をユビキチン化・分解することによりTGFβのシグナルおよび筋線維芽細胞の分化を負に調節していることも見いだした。このことから、PDLIM2は、炎症の修復期において、TGFβ-Smadのシグナルを抑制して組織の過剰な再構築および線維化を負に制御することにより、創傷治癒反応が過剰にならないように適切な時点で終息させるようにはたらいていると考えられる。さらに、PDLIM2欠損マウスに、細胞内寄生細菌であるPropionibacterium acnesの加熱死菌を投与した場合、PDLIM2欠損マウスにおいて、Th17細胞分化およびTh17細胞依存性の肝臓の肉芽腫の形成が促進された。Th17細胞の分化および活性化にはIL-6による転写因子STAT3の活性化が必須であるが、PDLIM2欠損マウス由来の細胞においては、STAT3のタンパクレベルおよび転写活性が亢進していることも明らかになった。このことから、PDLIM2は、STAT3の活性を抑制することにより、Th17の分化・活性化を負に制御することが明らかになった。
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