2010 Fiscal Year Annual Research Report
医療従事者側から見た生体肝移植のこれまでの評価と今後の課題
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20590508
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
倉田 真由美 滋賀医科大学, 医学部, 客員助手 (50378444)
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Keywords | 生体肝移植 |
Research Abstract |
本研究は移植医療従事者へのインタビュー調査等を通して医療者側の視点から本治療法が抱える問題点を明らかにし,今後の移植医療のあるべき姿について検討することを目的としたものである.しかし予備調査の結果,生体移植に通底する問題を明らかにするためには日本の臓器移植医療全体の歴史を見渡しながら,わが国の生体肝移植の普及過程をまずは解明する必要があると考え歴史的検証へと研究方法を変更した. 2008年度は生体肝移植に関して記述された論考を収集し主要なものには解題を付し,『生体肝移植の変遷と成立過程に関する資料集(1989-2008)』を作成.2009年・2010年度はこれらの資料をもとに,日本の生体肝ドナーの産出過程を生体肝移植をめぐる技術および制度の歴史的検討を通じて明らかにし,それを踏まえて生体肝ドナーが直面する問題を考察する研究に取り組んだ.本年度は今日の生体移植を中心とした移植医療が構築された背景および,脳死移植の両輪として位置づけられるようになるまでのいきさつや生体ドナーがケアの対象となるまでの経緯を『日本における生体肝移植の普及過程』(研究成果報告書)としてまとめた. 本研究を通して生体ドナーおよび生体移植治療が孕む倫理的・社会的・法的な問題を生みだした背景と経緯が明らかになり,日本の生体臓器移植医療の歴史を立体的に理解することが可能となった.また生体ドナーの位置づけが法的・社会的に不確定であることがケアや保障を遅らせているのではないかという知見が得られた.今後は生体移植の普及拡大によって産出された生体ドナーを社会的・法的にどのように位置づけるかについて検討し,体系的な臓器移植医療システムを構築していくことが課題である.
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