2008 Fiscal Year Annual Research Report
急性期医療における有害事象の自動判定システムの開発に関する研究
Project/Area Number |
20590520
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
梅里 良正 Nihon University, 医学部, 准教授 (60213485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大道 久 日本大学, 医学部, 教授 (60158805)
前田 幸宏 日本大学, 医学部, 助手 (10287641)
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Keywords | 有害事象 / 医療の質 / クリニカル・インディケーター |
Research Abstract |
本研究は、入院医療における有害事象の発生を電子化された診療データから自動的に判定することを試みるもので、抽出された症例を臨床的にレビューすることにより医療の質向上を図ろうとする、医療の質改善の一手段の提案である。本年は研究初年度であるが、島根県立中央病院を研究協力施設とし、日本大学医学部附属板橋病院と2施設並行して、有害事象の診療データからの抽出を試行した。有害事象として、本年度は再入院に焦点を当て、再入院の中から、真に有害事象として判断できる症例の抽出ロジックの検討を行なった。具体的には、有害事象の発生による再入院と、有害事象の発生によらない再入院に大別するため、「再入院理由の調査→診療データによる特定→非該当症例の再入院理由の調査」のルーチンを繰り返し、再入院の理由を診療データにより、自動的に判定できる範囲の拡大を図った。有害事象発生によるものとされた再入院理由は、(1)医原性疾患の発症、(2)薬剤の副作用、(3)手術処置の合併症、(4)検査の合併症、(5)早すぎる退院/不十分な治療が挙げられた。一方、有害事象によらない再入院としては、(1)新規疾患の発症、(2)外傷・外傷性疾患、(3)診断の疑い→確定、(4)前回入院が検査目的、(5)教育入院、(6)計画された短期入院の繰り返し、(7)科学療法の実施、(8)放射線療法の実施、(9)計画的な手術・処置、(10)入退院が繰り返されることが想定される疾患、などが挙げられた。再入院は、DPC包括支払い制度下において診療の質が低下していないかを測る指標の一つとして毎年調査されているが、上述した有害事象によらない再入院は、除外して評価する必要がある。研究初年度の2病院調査では、再入院の約6割は上述の有害事象によらないケースとして特定された反面、明らかな有害事象の発生による再入院と特定された症例は僅かである。初年度の研究結果から、医療の質の評価に再入院率を使用する場合、有害事象によらない再入院症例を除外して用いる必要があることが明らかとなった。
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