2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳性小児麻痺の機能再生に関する緩徐進行性脳損傷モデルラットを用いた研究
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20590552
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
三島 健一 福岡大学, 薬学部, 准教授 (00320309)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 道弘 福岡大学, 薬学部, 教授 (10091331)
岩崎 克典 福岡大学, 薬学部, 教授 (10183196)
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Keywords | 新生児 / 低酸素性虚血性脳症 / 脳虚血 / 緩徐進行性脳損傷 / 学習・記憶 / 再生 / 性差 |
Research Abstract |
新生児低酸素性・虚血性脳症(HIE)は、周産期脳障害の主要な原因であり、重篤な神経学的後遺症をもたらすが、現時点では有効な治療法は確立されていない。我々は、HIEモデルラットの長期にわたる解析から、このモデルの脳損傷は、緩やかに進行し、従来の成熟ラットの脳虚血で生じる遅発性細胞死とは異なり、HIEに特有であることから、緩徐進行性脳損傷(slowly progressive brain damage;SPBD,Neurosci Lett 376,194-199,2005)と名付けた。さらに、HIEモデルラットは、この緩徐進行性脳損傷によって進行的な学習・記憶障害を引き起こすため、HIE発症後の機能再生を調べるのに非常に有用なモデルであることを示した。また、このHIEモデルに対してリハビリテーションなどの治療戦略が有効であることも明らかにした。本年度は、HIEの機能再生の性差の影響を調べるために、HIE処置後に水迷路課題のみを行った群と複数の学習課題を試行した後に水迷路課題を行った群での空間学習に対する影響を比較した。8方向放射状迷路課題と選択反応時間課題の2つの学習課題を試行した後に行った雌性ラットの水迷路課題の空間学習障害は、HIE処置後16週目に初めて水迷路課題を行った空間学習障害に比べて有意に改善され、脳損傷も抑制された。一方、雄性ラットにおいては空間学習障害も脳損傷も改善されなかった。このことは、性差の影響を考慮して、複数の学習課題などの訓練を行うリハビリテーションにより、緩徐進行性脳損傷を伴う進行的な学習・記憶障害を改善できることを明らかにした。
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