2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規分子疫学的手法を用いたPVL陽性黄色ブドウ球菌・MRSAの蔓延状況の解明
Project/Area Number |
20590608
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石埜 正穂 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30232325)
鷲見 紋子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10363699)
漆原 範子 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80396308)
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / MRSA / PVL / 遺伝子型 / コアグラーゼ型 / MLST |
Research Abstract |
本研究の目的は、市中感染型MRSA(CA-MRSA)の特徴として知られるPanton-Valentine leukocidine(PVL)について、これを保有する黄色ブドウ球菌、MRSAの蔓延状況とその特徴を国内外の分離株について明らかにすることである。本研究の開始当初より、新規分子疫学的解析方法として、PCR法を用いたコアグラーゼ遺伝子型別法の開発に取り組み、その方法を確立し有用性を実証した。本研究における黄色ブドウ球菌の疫学調査では、すべての菌株についてこの遺伝子型別法を用いて解析を行った。今年度は本研究の最終年度にあたり、北海道を中心として行なった研究成果のまとめと、海外の共同研究先であるミャンマーでの小規模な疫学調査を実施した。北海道の外来患者に由来する黄色ブドウ球菌1017株中を対象とした研究では、約19%がMRSAで、そのうち約8割は病院感染型MRSAと似た特徴を有していた。PVL遺伝子はMRSA3株に検出され、それらはST6またはST59に属していた。ST6は国内外ともに市中感染型では稀な型であり、北海道での土着的な分布が示唆され、またST59は台湾を中心に分布拡大が報告されているCA-MRSAの型であった。ミャンマーでの調査は、同国国立保健研究所で2008年に分離された23株を対象とした。PVL陽性株は5株でST121に属し、いずれもMSSAであり皮膚感染症(膿)に由来していた。被検菌株について毒素・病原因子の分布を調べたところ、PVL陰性株やMRSAと異なり、PVL陽性株はエンテロトキシン遺伝子クラスターを有し、骨シアロ蛋白結合蛋白遺伝子を有していた。エラスチン結合蛋白遺伝子は全菌株に検出されたが、PVL陽性株の持つその遺伝子は内部に180塩基もの長い欠失が見られ、本来の蛋白よりも60アミノ酸短いことが推定された。それらの病原因子の保有および変異がPVL陽性黄色ブドウ球菌の病原性に関与している可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)