2010 Fiscal Year Annual Research Report
発育・発達期の低濃度水銀蒸気曝露による神経行動毒性と遺伝的要因の影響
Project/Area Number |
20590611
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Research Institution | Hachinohe University |
Principal Investigator |
吉田 稔 八戸大学, 人間健康学部, 教授 (80081660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雅彦 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (20256390)
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Keywords | 無機水銀 / 水銀蒸気 / マウス / 神経行動毒性 / 脳内水銀濃度 |
Research Abstract |
水銀蒸気による中枢神経毒性の発症メカニズムは神経組織内での酸化反応で生成したイオン性無機水銀(以下Hg^<2+>)が水銀蒸気(Hg^0)による神経症状の発現に起因していると考えられている。最終年度は、Hg^0曝露モデルマウスとして、脳室内に直接Hg^<2+>を投与したマウスを用い、脳内水銀濃度と神経行動機能への影響に対する量-影響関係の解明ができるか否かを検討した。実験はC57BLマウス(8週齢、メス)の脳室内に1mMあるいは2.5mMのHgCl_2の生理食塩水溶液を投与した。投与後、3週間および3ヶ月後にオープンフィールド試験と受動回避試験を行ったのちに屠殺し、脳内水銀濃度を測定した。脳の水銀濃度は、3週間後で0.378±0.111μg/g(1mM群)および0.587±0.107μg/g(2.5mM群)、3ヶ月後で0.0957±0.027μg/g(1mM群)および0.275±0.088μg/g(2.5mM群)と対照群(0.011~0.013μg/g)と比較して高濃度に蓄積していた。受動回避試験は、3か月後の25mM群で対照群と有意差が認められた。オープンフィールド試験でも、対照群に比べ、3か月後の2.5mM群で移動距離の延長とフィールド周辺部への分布時間の延長が認められた。以上の結果より、Hg^<2+>を直接的にマウス脳室内に投与することにより、投与した水銀が長期にわたって脳組織に蓄積し、神経毒性を発現することが判明した。脳室内に直接Hg^<2+>投与するにより量-反応的に神経行動毒性が認められることから、Hg^0曝露による神経毒性発現の解明のモデルとしての可能性を示唆するものである。しかしながら、本実験モデルをHg^0曝露実験モデルとして利用できるかについては脳内水銀分布、タンパク質機能の変化、遺伝子発現の変動など、今後さらに検討を進めていく必要がある。
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Research Products
(3 results)