2011 Fiscal Year Annual Research Report
循環器疾患等の予防のための腹囲を含む健康診断の有用性に関する研究
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20590622
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
堀江 正知 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (90341528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川波 祥子 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (70449940)
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Keywords | 死亡率 / 標準化死亡比(SMR) / 産業医 / 労働者 / 職域 / 循環器疾患 / 健康診断 / 腹囲 |
Research Abstract |
本研究は、専属産業医のいる事業場の在職死亡者事例について、個人情報を保護したうえで、死亡年月日、年齢、性別、死因、直近の定期健康診断結果(身長、体重、腹囲、血圧、脂質値、血糖値、喫煙習慣)の情報を取得し、(1)対象事業場の性・年代別死亡率を人口動態統計に基づく就業者の死亡率と死因別に比較すること、(2)定期健康診断結果と全死亡者に占める循環器疾患の割合との関係を調べることを目的として実施した。平成23年度は前年度と同様の方法で平成22年中の健康管理対象者数、死亡者数、死因等を調査した。またこれまでの調査結果から男女ともに死因の1位を占めるがんについて、職域で行うがん検診による予防効果を明らかにするため、がん検診(胃、大腸、乳腺、子宮)の実施状況調査も追加した。平成23年11月末時点で28事業場から回答を得た。対象労働者数は165,609人、死亡者数は154人であった。人口動態統計と比較した標準化死亡比(SMR)は、男性0.283、女性0.309、昭和60年モデル人口による年齢調整死亡率(10万人対)は、男性87.2、女性42.0であった。死因は判定委員会を設置して客観的に分類した。男性の死因は、がん41.4%、循環器疾患25.0%、自殺15.0%で、がんは肺がんが8.6%と最多で、次いで直腸がんが5.7%だった。女性の死因は14人中12人ががんであった。死亡者の定期健康診断結果の解析では、循環器疾患(心疾患、脳血管障害等)での死亡者には、喫煙者、高血圧、高脂血症、耐糖能異常(境界域・糖尿病域)、メタボリック症候群の該当者が多い傾向を認め、在職者の死因とこれらの要因との間に関連が示唆された。がん検診の追加調査では24事業場から回答を得た。検診実施率はいずれも労働者健康状況調査結果より高かったが、乳腺、子宮の実施率、受診率は胃、大腸と比べて低かった。対象事業場全体を基準とした消化管のがんによる男性のSMRは、大腸がん検診を実施する事業場が非実施の事業場よりも小さかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では平成20年度に研究体制の整備を行い、同年度から計画どおり、一年ごとに対象事業場の産業医から事業場の健康管理対象者、在職者死亡の死因、健康診断結果を報告させ、これまでのべ627の事業場、1993,440人の健康管理対象者、2024人の在職者死亡者のデータを取得し、死因の集計、循環器疾患等による死亡とBMI、高血圧、耐糖能、脂質値、メタボリックシンドロームとの関連を解析している(調査対象期間1999~2010年)。対象事業場の産業医に対しては、調査結果をまとめたニュースレターを作成して毎年送付している。また、研究の経過中に明らかとなった課題を解決するために、対象事業場全体の定期健康診断結果調査や、がん検診実施状況調査等の追加調査も適宜実施しており、研究は当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も計画に基づき、調査を継続する。また平成24年度は研究の最終年度であることから、これまで蓄積した調査結果より、BMI、腹囲、血圧、総コレステロール、血糖の測定値の循環器疾患等を予防する上での有効性を比較し、職域における健康診断に適用されるべき健康診断項目に関するガイドラインの試案を作成する。更に、職域におけるがん、循環器疾患、自殺、事故の予防に関して、産業医が健康管理を行うことに関する提言をまとめる。本研究を通して得られた職域の在職者死亡に関するデータベース、健康診断項目の有効性に関するガイドライン試案、産業医による健康管理に関する提言については、広く社会に還元するために専用のホームページを作成して公表する。
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Research Products
(3 results)