Research Abstract |
本研究は,容器に入っている混合有機溶剤が蒸発し,それが気中にどのくらいの速度で拡散するのか,また,それが経時的にどのように変化するのかについて,実験面,理論面の両方から検討を行うことにより,混合有機溶剤作業のリスクアセスメントに有用なツールの開発を行うことを目的として計画したものである. 平成21年度までは,2成分系の混合有機溶剤について,容器に入った液の蒸発速度を求めるとともに,気液平衡論と移動速度論を組み合わせた理論モデルを作成し,両者の比較検討を行い,ある程度の成果が得られたが,現場では3成分以上の混合溶剤が使用されることが多い.そこで,最終年度である平成22年度は,4成分まで発生濃度を推算できるようにモデルを拡張し,実験値と比較検討を行った.また,これまでのモデルは系が定常状態になってからでないと適用できず,蒸気発生初期の濃度変動の大きい過渡状態に対応できなかったが,これについても推算できるように改良を行った. 有機溶剤は物質によって揮発性や極性が異なるため,混合した場合,蒸発することによって液組成が経時的に変化し,その結果,発生蒸気濃度も経時的に変化するが,この改良したモデルを用いて推算した2~4成分系の混合有機溶剤の環境空気中の濃度の経時変化を,実験的に求めた値と比較した結果,両者はきわめてよく一致し,本モデルにより,混合有機溶剤の蒸発速度が精度よく推算できることが認められた.本研究成果は,混合有機溶剤を取り扱う作業のリスクアセスメントに有用な知見を与えるものと考えられる.
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