2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20590625
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
熊谷 信二 Osaka Prefectural Institute of Public Health, 衛生化学部, 部長 (50250329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
車谷 典男 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10124877)
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Keywords | 石綿 / 肺がん / 周辺住民 / 標準化死亡比 |
Research Abstract |
1914年から2001年まで白石綿を使用して石綿製品を製造していた工場の周辺に1985年1月1日時点に居住しており、かつ2007年12月31日時点に本人を含めて家族が1人でも居住している507家族を対象とし、後向きコホート調査を実施した。 解析対象者は協力が得られた449家族の男性847人、女性881人であり、このうち2007年12月31日時点の生存者は男性669人、女性756人であった。生存者の喫煙割合は男性37.1%、女性8.1%であり、全国平均とほぼ同程度であった。2007年12月31日時点の死亡者は男性177人、女性125人であり、全死亡の標準化死亡比(SMR)は男性0.89(95%信頼区間0.76-1.03)、女性0.82(0.68-0.97)であった。 肺がん死亡者は男性18人、女性3人で、SMRは男性1.30(0.77-2.05)、女性0.63(0.13-1.84)となり、いずれも有意な過剰死亡は認められなかった。この中で職業性石綿曝露のない者は男性15人、女性3人であり、SMRは男性1.08(0.61-1.79)、女性0.63(0.13-1.84)であった。対象者を石綿相対濃度により、4つの群に分類して解析したが、石綿相対濃度が最も高いと推定された地域に居住していた群では、職業性石綿曝露のない肺がん死亡者は男性2人、女性1人であり、SMRはそれぞれ0.67(0.08-2.43)、0.96(0.02-5.34)となり、いずれも有意な過剰死亡は見られなかった。 住民からの聞き取り調査では、工場から周囲に石綿が飛散していたとのことであるが、石綿使用量がそれほど多くなく、使用したのが白石綿であったため、周辺住民の肺がん死亡者が有意に増加するほどの曝露ではなかったものと考えられる。ただし、本調査では、1985年時点に居住していた家族全員が2007年までに死亡したケースは対象者に含めていないため、リスクを過小評価している可能性がある。
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