2008 Fiscal Year Annual Research Report
家庭血圧測定導入の長期費用対効果:マルコフモデルによる検討
Project/Area Number |
20590629
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大久保 孝義 Tohoku University, 大学院・薬学研究科, 准教授 (60344652)
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Keywords | 家庭血圧 / 高血圧 / 費用対効果 / 医療経済 / 降圧薬 / 医療費 / マルコフモデル / 大迫研究 |
Research Abstract |
【目的】 高血圧治療の費用対効果は、欧米先進諸国と同様、日本においても重要な問題である。家庭血圧測定は随時血圧測定より、心血管系イベントに対する高い予後予測能を持つ。それゆえに、高血圧診断や治療へのHBP測定の導入は、医療費の削減につながることが期待される。本研究において、本年度は、未治療随時高血圧者に高血圧治療が行われると仮定した場合において、高血圧診断に家庭血圧測定を導入することによる費用削減効果の試算を行った。 【方法】 費用はマルコフモデルによるシミュレーションにより推定された。これらの計算は、一次スクリーニング後の治療費用、大迫研究より得られた白衣高血圧・高血圧の発症率、等のデータに基づいて実施された。本研究では分析期間を5年間とし、一次スクリーニングで随時血圧測定により高血圧と判断された1000人に対するシミュレーションを行った。 【結果】 高血圧診断において家庭血圧測定の導入を行わなかった場合、5年間で対象者1000人あたりの総医療費は1089万ドルであった。家庭血圧測定を導入した場合、当該医療費は933万ドルであった。高血圧治療における医療費の削減額について感度分析を行ったところ、67万ドルから251万ドルと、十分な医療費の削減額が推定された。これらの医療費削減は、主として白衣高血圧者への不必要な治療の回避に基づくものだった。 【結論】 未治療随時高血圧者に対する家庭血圧測定の導入により、医療費が削減され得ることが示唆された。家庭血圧の更なる普及が望まれる。
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