Research Abstract |
本邦において生活習慣病対策は急務の課題である.本課題では,予防医学的または健康科学的設定における生活習慣是正を促す健康教育の評価指標として,酸化リポ蛋白や酸化ストレスの関連分子マーカーを測定する意義を検証しており,経年的に検討成果は蓄積されてきた.本年度は,まず,喫煙集団において3か月間の禁煙介入を行い,その場で測定できる酸化ストレスマーカーとしてd-ROMs(Reactive oxygen metabolites)テストを採用して介入前後の測定値の変化を調査した.短期禁煙集団(男性38名,平均52歳)において,血中d-ROMs値は,介入前の平均312(標準偏差69)Carr Unitから介入後には281(57)Carr Unitまでに有意に低下した(p<0.01).肥満度や血糖は上昇する傾向にあった.これらの結果から,同テストは禁煙の経過とあわせて有意に変化する指標として使用できることが示唆された.次いで,肥満集団(女性50名,平均60歳)で,食事と運動を中心とした6か月間の介入を行い,酸化リポ蛋白の一種の酸化Lp(a)を介入前後に血清で測定した.Body mass index(BMI)は,介入前の平均27.3kg/m^2から介入後には26.Okg/m^2に有意に低下した.Lp(a)はほとんど変化しなかったにもかかわらず,酸化Lp(a)は介入前の平均0.3nmol/Lから介入後には0.2nmol/Lに有意に低下し(p<0.05),この変化量はBMIの変化量と有意な正相関を示した(相関係数0.47,p<0.05).この相関は,多変量解析でみても同様であった.こうした一連の研究成果を踏まえ,生体内での酸化病態の形成機序も考慮すると,検討してきた新規の酸化関連分子マーカーは,一般に用いられている健診検査項目の上流あるいは包括的な位置を占め,その一般的な検査指標を上回って,健康教育の効果を鋭敏に表す,あるいは新たな情報を付加する場合のあることが確認できてきた.生活習慣病における教育的介入における酸化分子の測定意義,さらにcost-effectivenessに関する検討は継続すべきだが,同マーカーを含む健康教育システムは有益である可能性がある.
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