2008 Fiscal Year Annual Research Report
過重労働者の疲労を客観的に評価するバイオマーカーの確立
Project/Area Number |
20590662
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
倉恒 弘彦 Kansai University of Welfare Sciences, 健康福祉学部, 教授 (50195533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 世貴 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 講師 (30420722)
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Keywords | 産業疲労特定検診 / 主観的疲労度 / 自律神経機能 / 唾液アミラーゼ / アクティグラフ |
Research Abstract |
某企業の従業員(280名)を対象に疲労質問表を用いた主観的疲労度チェック(身体疲労、精神疲労、総合疲労)、労働時間、睡眠時間、疲労による生活活動低下の有無を調査するとともに、脈拍変動解析による自律神経機能評価、交感神経緊張の指標といわれる唾液アミラーゼ計測を行った。その結果、(1)身体疲労得点と精神疲労得点の相関を見ると、Pearson相関係数でR=0.713(p<0.001)と高い相関を示し、総合疲労得点が各個人の疲労状態の代表値と考えてよいことが判明した。(2)脈拍変動解析から得られる交感神経緊張の指標LF/HF比は、年齢に弱い正の相関がみられた。(3)唾液中α-アミラーゼ活性も年齢と弱い正の相関がみられ、疲労が認められない健常コントロール群(88名)と比較して有意な増加が認められた(p<0.01)。(4)しかし、主観的評価である疲労質問表結果と自律神経機能LF/HF比、あるいは唾液アミラーゼ活性には明確な相関はみられなかった。(5)残業時間によって群分けを行い、疲労得点・LF/HF比・睡眠時間・唾液中アミラーゼ活性評価を行うと、LF/HF比においてのみ残業時間依存性に交感神経緊張が亢進する傾向が認められた。(6)主観的疲労度チェックでは全く疲労がないと回答していた114名の職員のうち、LF/HF比2〜5の相対的交感神経緊張状態が33名(28.9%)、LF/HF比5以上と極めて交感神経系の緊張状態にあるものが14名(12.8%)存在した。そこで、LF/HF比5以上の14名を対象にアクティグラフを用いた睡眠・覚醒リズム解析を行ったところ、多くの被験者で中途覚醒、睡眠効率の低下などの睡眠の質の低下が見出され、潜在的な疲労病態の存在が明らかになった。したがって、労働者の中には疲労を自覚していない自律神経系のバランス異常が存在しており、過労死やメンタルヘルス障害の発生に関与している可能性がある。現在、IT産業の従業員、および家族を対象にした大規模な産業疲労簡易検診を進めており、より明快な相関関係が明らかになると確信している。
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Research Products
(5 results)