2009 Fiscal Year Annual Research Report
漢方方剤「麻黄湯」のインフルエンザウイルス感染に対する抗病効果と薬効機序の解析
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20590705
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
永井 隆之 Kitasato University, 大学院・感染制御科学府, 講師 (00172487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 寛章 北里大学, 大学院・感染制御科学府, 准教授 (70161601)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / 薬学 / 薬理学 / 東洋医学 / 麻黄湯 / インフルエンザ / 解熱 |
Research Abstract |
インフルエンザ(Flu)は毎年冬期に流行し、39℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身症状が強い重篤な急性感染症である。また近年、高病原性鳥インフルエンザウイルス(FluV)(A/H5N1)のヒトでの流行が危惧され、2009年度には豚型FluV(A/H1N1)がパンデミックを起こした。現在、Flu治療の第一選択薬としてオセルタミビル(OSE)が頻用されているが、OSE耐性FluVの比率の増加などが問題になっている。これらのことから、Fluに対して安全かつ有効に多様な患者に対応するために、治療薬の選択肢の幅を広げることが望まれる。麻黄湯は経験的にFluの治療に用いられているが、基礎研究によるFluに対する有効性の評価や作用機序の検討は未だ行われていなかった。そこで、麻黄湯のFluに対する有効性と薬効機序について、マウス感染モデルによる評価系を用いて検討した。昨年度の検討で、麻黄湯がFluV A/PR/8/34(H1N1)を上気道感染させたA/Jマウスで、感染2日後において気道でのFluV増殖を抑制し、気道及び血清で抗FluV抗体価を上昇させることを明らかとした。そこで今年度は、麻黄湯による抗体価上昇作用の機序を解明するため、FluVを感染させていないA/Jマウスに麻黄湯を48時間経口投与し、血清中の抗体価を測定した。その結果、麻黄湯の投与により、FluVを感染させていないマウスにおいても血清中のFluV結合性IgGl抗体価が有意に上昇した。また、FluV B/Ibaraki/2/85の上気道感染に対しても麻黄湯が解熱作用を示し、気道でのFluV増殖を抑制した。 今年度の成果により、麻黄湯は血清中のFluVと結合する自然抗体を上昇させたことから、自然免疫系を活性化させる可能性が示唆された。この作用が麻黄湯の早期の薬効発現に関与している可能性が推定される。
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Research Products
(3 results)