Research Abstract |
これまでの検討から,胃内逆流胆汁酸組成が逆流性食道炎及びBarrett食道の発生に関与する可能性が判明し,脂肪酸合成酵素(FASn)やCOX-2を介した逆流胆汁酸のGERD関連疾患への関与の詳細を解明する意義が見出された。21年度には,更なる臨床的検討として,GERD関連疾患と深く相関し,その病態生理の指標となる二つの指数を胃内逆流胆汁酸組成比から確定させた。主に疎水性及び親水性胆汁酸比であるが,指数Iは逆流性食道炎すなわち食道扁平上皮の粘膜障害を,指数IIはBarrett食道発生のpredictorとして臨床応用の可能性が示めされた。また,後者はFASn及びCOX-2とも相関することから,特に発癌ポテンシャルとの関連が示唆される。SEG-1 cell lineを用いた検討では,FASn mRNAは低pH下の胆汁酸暴露により誘導されることが証明され,さらに,阻害剤であるC75の投与により,容量依存性の阻害を証明できた。以上のことは,Barrett食道においてFASnは,Barrett発癌に深く関与することを示唆するとともに,その影響は胃内逆流胆汁酸指数により予期することが可能と言える。従って,逆流指数の評価は,Barrett食道の内視鏡サーベイランスに胃内胆汁組成の検討を加味した新しいサーベイランス法構築の可能性を持つ。今後,この事実の確証を得るために,臨床的研究による評価を進めるとともに,指数を有意に低下させるUDCA製剤の投与が,胃内逆流胆汁組成変化を介して,如何にFASn及びCOX-2の変化をもたらすかを,臨床サンプルからのorgan cultureで検討していく必要がある。
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