2010 Fiscal Year Annual Research Report
ピロリ菌病原因子による宿主細胞エンドサイトーシス阻害から胃疾患誘導への機序解明
Project/Area Number |
20590725
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
赤田 純子 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (30346548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 浩樹 久留米大学, 〓研究所, 准教授 (60322244)
中村 和行 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90107748)
西川 潤 山口大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (00379950)
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Keywords | エンドサイトーシス / ヘリコバクター・ピロリ / CagA / VacA |
Research Abstract |
ピロリ菌は、胃癌を誘発することが証明された唯一の病原細菌であり、新たな治療戦略の開発にはピロリ菌による発癌機構解明が急務である。病原性蛋白質CagAはピロリ菌により宿主細胞内に注入され、増殖シグナルや細胞極性の異常を起こし、発癌に関与することが実験的に示されたが、その機構は未だ明らかではない。本研究で我々はこれまでに、CagAは宿主細胞のエンドサイトーシス、特にピノサイトーシス経路を阻害すること、さらにその機能によりピロリ菌の分泌性細胞空胞化毒素であるVacAの細胞内への侵入を抑えていることを明らかにしてきた。VacA受容体細胞膜蛋白質RPTPalphaのエンドサイトーシスを解析すると、CagA発現細胞においてはコントロール細胞と比較してRPTPalphaは細胞膜に留まりやすく、エンドサイトーシスが遅延していた。ここまでの研究を論文にまとめ報告した。さらに、日本人患者由来ピロリ菌株、および同株のcagA遺伝子欠損株、vacA遺伝子欠損株、両遺伝子欠損株を細胞に感染させてRPTPalphaの局在を観察すると、CagAが存在する感染ではRPTPalphaは細胞膜近傍に留まりやすい一方、VacAが存在する感染では、細胞質内で小顆粒や空胞内大顆粒として観察された。このように、CagAとVacAの存在バランスにより、RPTPalphaは細胞内局在を大きく変えていたことから、VacAとCagAはRPTPalphaのエンドサイトーシスに関して相対する分子であることが示唆された。この現象を、欧米人由来の標準株感染とその遺伝子破壊株を作成して追試したところ、基本的には日本株と同様であったが、CagAのみが存在する感染細胞においては、RPTPalphaはより強く細胞膜に局在するだけでなく、細胞外に突出して菌体に絡み付いている様子も観察された。CagAとVacAによる細胞膜蛋白質の局在変化はRPTPalphaのみならず、他の細胞膜蛋白のエンドサイトーシスにも影響を与えて胃疾患誘導に関与する可能性が考えられたので、様々な細胞膜蛋白質の細胞内局在を検証中である。
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