Research Abstract |
【目的】モチリンおよびエリスロマイシン(EM)はモチリン受容体(MR)に結合し,またグレリンはGHS受容体(GHSR)に結合し,消化管運動機能調節に重要な役割を果たしている。今回,(1)EM刺激によるヒトモチリン受容体トランスジェニック(TG)マウスの解析とともに,(2)モチリン受容体とGHS受容体のキメラ受容体を作成しクロストークの解析を行った。【方法】(1)ヒトモチリン受容体TGマウスをEM非投与群と20mg/日投与群に分け,代謝ケージを用いて,体重増加,食餌摂取量,飲水量,便量,尿量を解析した。(2)野生型モチリン受容体のうち,膜貫通部がそれぞれ保存されたGHS受容体とのキメラ受容体を,site-directed mutagenesis法にて同一の制限酵素認識部位を導入し,制限酵素で切断後,T4リガーゼを用いてライゲーションし作成後,COS細胞に-過性に発現させ,モチリン,EMあるいはグレリン刺激による細胞内カルシウム濃度変化をFURA-2-AM系で,またモチリン,グレリンの結合能を競合的結合反応で,測定した。【結果】(1)ヒトモチリン受容体TGマウスのEM投与群では,非投与群と比べ,食餌摂取,飲水量は増加したが,体重増加は少なかった。(2)MR(1-62)/GHSR(68-366)はグレリンのみに反応,MR(1-102)/GHSR(108-366)はグレリンとEMに反応,MR(1-178)/GHSR(184-366)はEMに反応,しかしGHSR(1-183)/MR(179-142)はモチリンもEMもグレリンも反応しなかった。【結論】(1)モチリン受容体は,消化管運動促進の結果として食餌摂取量の増加がみられるが,活動量・代謝量の増加により体重増加は見られないことが明らかとなった。(2)モチリン受容体とGHS受容体のクロストークは少ないことが示唆された。今後,モチリン受容体のリガンドを脳室内投与することによる中枢神経作用とともに,末梢での代謝の変化を明らかにすることを予定している。
|