2010 Fiscal Year Annual Research Report
消化管悪性腫瘍に対する治療標的としてのインスリン増殖因子の有用性
Project/Area Number |
20590740
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮本 心一 京都大学, 医学研究科, 助教 (90378761)
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Keywords | 分子標的療法 / インスリン様増殖因子 / 中和抗体 / 家族性大腸腺腫症 |
Research Abstract |
我々は、これまでにインスリン様増殖因子(IGF)に対する中和抗体を用いて、前立腺癌、多発性骨髄腫の骨転移および大腸癌肝転移の系においてIGFの治療標的としての有用性を証明してきた。我々の開発したIGF中和抗体(KM1468)はマウスIGF-IIに対する中和活性は持つがマウスIGF-Iに対しては中和活性がない。我々はよりシンプルな系で治療実験を行うためマウスIGF-I中和抗体(KM3168)を作製した。若年で腸管に多数のポリープが発生し高率に癌化する家族性大腸腺腫症(FAP)のモデルマウスとマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-7のノックアウトマウスの交配でポリープの発生が抑えられること、またIGF-IIの腸管におけるコンディショナルノックアウトマウスとの交配でもポリープの発生が抑えられるという報告は、MMP-7がすべてのIGF結合タンパクを分解する酵素活性をもつ事実と合わせ、局所で活性化されたIGFが腫瘍の発生にも重要な役割を果たすことを強く示唆するものである。このような背景のもとIGF中和抗体を用いてFAPにおけるIGFの治療標的としての有用性を検討した。KM1468とKM3168を2系統のFAPモデルマウスにそれぞれ投与し、ポリープの発生抑制実験を試みたところ、いずれのマウスにおいても、IGF-I、IGF-IIの中和によりポリープの発生が抑制され、またIGF-I/IIの両者を中和することにより相加的な効果が確認された。またIGF-Iの由来は主として肝臓であること(endocrine)、IGF-IIの由来は主としてポリープの間質(paracrine)およびポリープ自身(autocrine)であることが明らかとなり、腫瘍周囲の微小環境におけるIGF-IおよびIGF-IIはFAPのポリープの発生において重要な役割を果たしており、治療標的となりうることが証明された。
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