2009 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌発生に対する各種脂質の影響及びその修飾因子に関する検討
Project/Area Number |
20590745
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
岩切 龍一 Saga University, 医学部, 准教授 (70232642)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 修二 佐賀大学, 医学部, 教授 (80188755)
綱田 誠司 佐賀大学, 医学部, 助教 (70264158)
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Keywords | 大腸癌 / Wntシグナル / アラキドン酸カスケード / 共役リノール酸 |
Research Abstract |
大腸癌は近年の日本において増加傾向にあり,高脂肪や低食物繊維の影響が考えられている.我々はこれまでにアゾキシメタン(AOM)によるラット大腸発癌モデルにおいて,牛脂の長期摂取が大腸発癌を促進することを報告した.今回,牛脂に共役リノール酸(CLA)を添加し大腸発癌に及ぼす影響を検討した.方法:6週齢雄性SDラットをAOM投与群と非投与群に分け,各群で10%牛脂混合食餌を標準食とし,コントロール群,中性脂肪型CLA添加群(TG),遊離脂肪酸型CLA添加群(FEA)の3群に割り付けた.AOM投与から12週後に大腸癌の前癌病変としてaberrant crypt foci(ACF),44週後に腫瘍発生および背景粘膜における細胞増殖能(BrdU)やアポトーシス,Wntシグナル,アラキドン酸カスケードの各関連タンパクの発現を検討した.結果:両CLA群でACFの発生が抑制され,44週後の腫瘍発生数も両CLA群で有意に抑制された.FEA群では半数のラットで腫瘍発生を認めなかった.両CLA群でBrdU陽性細胞数の減少を認め,陽性細胞の分布は牛脂単独と比較し腺窩底部に多く見られた.Wnt2,beta-catenin,cyclin D1などのWntシグナル関連タンパクおよびcyclooxygenase-2,prostaglandin E2,thromboxane B2などのアラキドン酸カスケード関連タンパクが抑制された.アポトーシスは牛脂単独群と比較し両CLA群でcaspase-3活性の上昇を認めたが,TUNEL陽性細胞数はFFA群で他の2群より有意に増加した.考察:CLAはTGおよびFFAとも牛脂長期摂取下においてラット大腸発癌を抑制した.抑制効果はFFA群でやや強い結果であり,一因として両CLA群のアポトーシスに及ぼす影響の違いが示唆された.
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