Research Abstract |
研究代表者はこれまでに消化器癌組織における全79種類のリボソーム蛋白質の遺伝子発現プロファイルを行い,近接正常組織に比べ癌組織で遺伝子発現が変化する癌関連リボソーム蛋白質を複数同定した.本研究ではこれら癌関連リボソーム蛋白質の機能解析を通じて,消化器癌の新しい診断・治療予測システムを開発しようとするものである 平成22年度は以下の成果を見いだした 1.p53の機能を調節するリボソーム蛋白質の解析 我々が同定したp53を負に制御するリボソーム蛋白質L13について解析を行った.種々の分子生物学的手法により,L13蛋白がp53遺伝子の3'非翻訳領域に結合することでp53の翻訳を抑制することを見いだした.また,p53の安定性を促進するリボソーム蛋白質L5,L11,L23,p53の翻訳を促進するL26とL13との相互作用は認められなかった.したがって,リボソームの大サブユニットを構成する蛋白の中で,L13は単独でp53に対する抑制作用を有していると考えられた,さらに,L13の免疫染色ではp53変異のない胃癌症例でL13が有意に高発現していることが明らかになった.乳癌症例のマイクロアレイ解析でもp53経路に異常のない症例で有意に発現上昇していることも見いだし,L13がp53の機能を抑制することで発がんを促進することが示唆された 2.他の癌関連リボソーム蛋白質の発現と機能解析 胃癌,大腸癌組織隣接正常組織から抽出した全RNAを用いて,発現の定量解析を行ったところ,S11,L22,L23,L26,S27が癌組織において有意に発現低下していることを見いだした.いずれもその発現低下が悪性度,予後不良と相関していた.さらにこれまで癌における分析が行われていなかったL22に詳細に解析したところ,癌細胞の運動能,浸潤能を抑制する機能を有していることが明らかになった
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