2009 Fiscal Year Annual Research Report
比較定量ペプチドミクスによる肝疾患病態責任分子の解析と新規バイオマーカーの探索
Project/Area Number |
20590771
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
白木 克哉 Mie University, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90263003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 和史 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (60378370)
内田 和彦 筑波大学, 人間総合科学研究科, 准教授 (90211078)
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Keywords | 肝癌 / ペプチド / プロテオミクス / 肝炎 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き、肝細胞癌、肝硬変、慢性肝炎の血清サンプルを前処置後2D-μHPLCにより1140に分画し、それぞれの分画をMALDIプレートにスポット後、質量分析による計測を行い、その結果をディファレンシャル解析ツールにより解析した。その後に再調整することなくMS^n測定により、タンパク・ペプチドの構造決定をした。これらの一連の過程を自動化した2D-μHPLC-MALDI-TOF-MS法によって行った。この方法を用いて、肝癌患者血清で増加し、診断に有用なペプチド断片を同定した。その結果、肝疾患進行のマーカーとしてinter-α-trypsin inhibitor heavy chain 4(ITIH4)のペプチド断片を同定した。免疫組織染色により肝細胞癌組織にITIH4が発現することも確認した。このペプチドをマーカーとして利用することでALT正常の慢性肝炎を92%(ROC=0.9)の感度で検出することが可能であった。また、肝細胞癌と肝硬変は84%(ROC=0.7)の感度で分離可能であった。さらに、このペプチド断片は二次元電気泳動のパターンから、10のvariantsに分離され、多段階質量分析により、糖鎖修飾の差異に起因することが明らかとなった。HCC113例、LC100例、慢性肝炎102例における検討で、これら10のpeptide variantsはそれぞれ異なる動態を示し、中でもvariant9、10はHCCへの進展とともに特異的に発現レベルが上昇していた。この2つのpeptide variantsを組み合わせることで、CHとHCCは85%(ROC=0.89)、LCとHCCは84%(ROC=0.77)の感度で分離可能であり、特にstage1の初期のHCCではvs.CH、vs.LCともに100%の感度で分離可能であった。今回同定したペプチドはHCCの有用なマーカーであることが示唆され、既存の腫瘍マーカーと組み合わせることにより初期肝癌の診断能が上昇すると考えられた。さらに、他の同定ペプチドに関して解析を検討中である。
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