Research Abstract |
本研究は肝移植治療を受けた肝細胞癌症例の再発予測因子としての遺伝子プロモーターメチル化の意義を検討することを目的とする。対象は京都大学医学部附属病院肝胆膵移植外科で肝移植手術を受けた症例であり、平成21年4月現在47例の肝細胞癌症例から腫瘍部および非腫瘍部の凍結保存検体を取得している(倫理委員会承認番号G-135)。また、これらの組織からDNAを抽出し、22の常染色体およびX染色体を網羅する400のマイクロサテライトマーカー(Linkage Mapping Set ver 2.5,Applied Biosystems社製)を用いて26症例の肝細胞癌について染色体異常を検出した。さらにヒトゲノム上の10,000SNPに対応するオリゴヌクレオチドを搭載したマイクロアレイ(GeneChip^<[○!R]> Human Mapping 10K Array,Affymetrix社製)を用いて18症例の肝細胞癌について染色体異常を検出した。この結果従来より肝細胞癌で高頻度に異常が報告されている染色体異常(以下染色体短腕をp,長腕をq,染色体重複を+,欠失を-とする)-1p,+1q,-4q,-8p,+8q,-13q,-16q,-17pなどが高頻度に認められた。また肝細胞癌に高頻度に異常が報告されている遺伝子変異としてがん抑制遺伝子TP53のエクソン5,6,7,8について直接シークエンス法を用いて遺伝子変異を検出した。これらのゲノム異常は本研究の主要解析項目である遺伝子プロモーター領域のメチル化の情報と統合して最終的に予後予測に用いる予定である。プロモーターアレイを用いた網羅的解析を行うために上記サンプルについてsonciatorを用いてDNAを200-700bpに断片化し、抗5-メチルシトシンポリクローナル抗体(Megabase Research Products,Lincoln,NE,USA)を用いて免疫沈降を行いメチル化CpGを含むDNA断片を回収した。また、COBRA法を用いたプロモーターメチル化の検出のため、APC,GSTP1,CDKN2A,HIC1,CACNA1G,RUNX3,SOCS1について実験系を確立した。今後はまずCOBRA法を用いてメチル化DNAの回収率の検討を行い、免疫沈降方の最適化が確立した後に、25,500のヒト遺伝子プロモーターをカバーする460万のプローブを搭載したGeneChip^<[○!R]>Human Promoter 1.OR ArrayをAffymetrix社のプロトコールに従って行う予定である。
|