2010 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌における肝移植治療後の予後因子としての遺伝子メチル化の研究
Project/Area Number |
20590772
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 貴文 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (40378732)
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Keywords | 生物系 / 医歯薬学 / 内科系臨床医学 / 消化器内科学 / 肝臓学 |
Research Abstract |
生体肝移植は肝細胞癌に対する根治療法の一つであるが、一部の症例においては肝外に転移再発することがある。本研究では肝細胞癌のエピゲノム異常、すなわちがん関連遺伝子(特にがん抑制遺伝子)のプロモーター領域のメチル化による不活化がこのような転移再発のリスク因子であるかどうかを検討する。京都大学医学部附属病院肝胆膵移植外科においてインフォームドコンセントが得られ生体肝移植を受けた症例を対象として、病理部に提出された検体より癌部・非癌部の肝組織を採取し解析に用いた。平成21年3月末までに目標症例数である50例から検体を取得し、Protenase K・フェノール・クロロホルム法を用いてDNAを抽出した。 遺伝子プロモーターのメチル化の検出にはCombined Bisulfite Restriction Assay (COBRA)法を用いた。すなわちbisulfite処理によりDNA領域のメチル基が付加されていないCpGジヌクレオチドのシトシンをウラシルに変換し、PCR法で増幅したのちこれらのメチル化の有無に依存する配列を認識する制限酵素を用いて切断し、アガロースゲル電気泳動を行い定量解析を行った。非癌部に比し癌部では以下のがん抑制遺伝子のプロモーター領域の高度なメチル化を認めた:APC,メチル化率中央値1% vs 47%, t検定にてp<0.001 ; CDKN2A, 0% vs 24%, p<0.001 ; RASSF1A, 6% vs 56%, p<0.001 ; HIC1, 2% vs 37%, p<0.001, GSTP1, 0% vs 25%, p<0.001), RUNX3, 0% vs 8%, p<0.001. Log-rank testを用いた生存分析においてAPC, RASSF1Aのメチル化を有する癌はそうでない癌より生存率が悪い傾向が認められたが統計学的有意差は認められなかった。一方、SOCS1, HIC1のメチル化を有する癌はむしろ予後が良い傾向が認められた(各p<0.001, p=0.026)。以上より遺伝子プロモーターのメチル化は肝移植治療後の転移再発の予測因子として有用である可能性が示唆された。
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