2010 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌発生過程における発癌関連遺伝子への変異生成の分子機序の解析
Project/Area Number |
20590774
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸澤 宏之 京都大学, 医学研究科, 講師 (80324630)
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Keywords | AID / 肝癌 / 遺伝子変異 / APOBEC2 / 炎症 |
Research Abstract |
本研究は、肝癌の発生過程におけるAIDによる遺伝子変異の標的分子を特定することにより、肝発癌に重要な役割を果たす発癌関連遺伝子領域を同定するとともに、炎症からの肝癌発生過程における遺伝子編集酵素の役割を明らかにすることにより、ヒト肝癌発生の分子機構を解明することを目的としている。まずはじめに、AID発現レンチウィルスを用いてヒト肝組織から樹立した初代ヒト肝培養細胞にAIDを持続発現させたところ、AID発現後の肝細胞から抽出したゲノムには、ほぼすべての染色体領域にわたって散在性に、多様な遺伝子コピー数異常が生じており、その大部分は一定の染色体領域の欠失として生じていることが明らかとなった。同様の所見は、胃培養細胞でも確認され、上皮細胞におけるAIDの持続発現の結果、突然変異のみならず遺伝子コピー数の異常が染色体レベルで惹起されることがわかった。興味深いことに、AID持続発現により胃上皮細胞では、癌抑制遺伝子CDKN2A, CDKN2Bをコードする遺伝子領域の欠失が誘導されることが確認された。一方、AIDと相同性をもつAPOBEC2を全身に発現するトランスジェニックマウスを作成し、その表現型を解析したところ、APOBEC2トランスジェニックマウスの肝細胞では、eIF4G2やPTENなど発癌関連遺伝子の転写産物に塩基変化が生成すること、またAPOBEC2発現マウスは高率に肝癌を発生することが明らかとなった。AID, APOBEC2はいずれも肝炎ウィルス感染や炎症性サイトカイン刺激により肝細胞に発現誘導されることから、これらの遺伝子編集酵素の持続発現が、肝癌の発生過程に必須の遺伝子異常の生成に深く関与している可能性が示唆された。
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