2009 Fiscal Year Annual Research Report
HBV持続発現小動物モデルを用いたHBV複製機構ならびにHBV変異誘発機構の解明
Project/Area Number |
20590776
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Disaeses |
Principal Investigator |
大川 和良 Research Institute, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Disaeses, 肝胆膵内科, 副部長 (80432540)
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Keywords | B型肝炎ウイルス変異 / 核酸アナログ / 薬剤耐性変異ウイルス / B型劇症肝疾患 |
Research Abstract |
本研究の課題の一つとしてin vivoにおけるHBV変異誘発機構を解明することが挙けられる。本年度はin vivoの前段階としてのin vitroでのHBV変異の検討として以下の2つを施行した。なお、in vivoにおける変異誘発機構に関しては本年度から次年度にかけて検討継続中となっている。 (1)核酸アナログ多剤耐性変異HBVウイルスの同定 HBV治療薬として核酸アナログが広く用いられているが、耐性ウイルスの出現が大きな問題点である。本検討ではラミブジン(LAM)、アデホビル(ADV)、エンテカビル(ETV)の3剤にて治療したB型慢性肝炎症例から多剤耐性HBVの同定を試みた。結果として本症例からは、i)rtL204V/rtL180M/rtS202G変異を有するLAM/ETV耐性株とii)rtA181T変異を有するLAM/ADV耐性株の2系統の変異.HBVが同定された。今後、核酸アナログ治療の進歩に伴い複雑な多剤耐性HBVの出現が予測されるため、本研究成果は非常に示唆に富むものと思われた。(Antivir Ther 2009 ; 14 : 873-7) (2)B型慢性肝炎致死的増悪症例から得られた変異HBVのウイルス学的特徴の検討 B型劇症肝疾患の発症に関わるHBV変異に関してはいまだ完全には明らかになっていない。本検討では経過中に致死的な急性増悪をきたしたB型慢性肝炎症例における増悪1年前と増悪後の血清からHBVのサブクローニングを行い、そのウイルス学的特徴の比較検討を行った。増悪1年前のHBV株はpreS/S遺伝子に多くの変異を有し、その結果環状2本鎖(RC)HBV DNA合成能の低下が認められた。一方、増悪後のHBV株ではこのような特徴はみられなかった。このことより本症例ではpreS/S遺伝子における高変異状態が解除され、環状2本鎖(RC)HBV DNA合成能が回復した結果、HBV増殖能の著明増加ひいては疾患劇症化に至ったと考えられた。本研究成果はB型劇症肝疾患発症に関与する新規HBV変異を示唆したものである。(Biochem Biophys Res Commun 2010 : 394 ; 87-93)
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Research Products
(7 results)