2010 Fiscal Year Annual Research Report
肝発癌における鉄代謝異常と脂質代謝異常のクロストーク
Project/Area Number |
20590782
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
日野 啓輔 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80228741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
是永 匡紹 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70420536)
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Keywords | C型肝炎 / 鉄 / 肝脂肪化 / 小胞体ストレス / 活性酸素 / ミトコンドリア / グリチルリチン |
Research Abstract |
わが国のC型慢性肝炎患者は高齢化が進んでおり、必ずしもインターフェロンなどの抗ウイルス療法が行えるとは限らない。一方で、加齢とともに肝発癌率は上昇するため臨床的には炎症の制御を目的としてグリチルリチン製剤の投与が行われる場合も多い。わが国では古くよりグリチルリチン製剤である強力ネオミノファーゲンC(SNMC)が使用されているが、その詳細な作用機序については不明な点も多い。そこで我々が開発した肝発癌モデルである鉄負荷HCVトランスジェニックマウス(TgM)にSNMC、7倍濃縮のSNMCならびに生食を週3回、6ヶ月間腹腔内投与し、主として鉄代謝や脂質代謝に及ぼす影響について検討した。SNMCは鉄代謝に影響を及ぼすことなく、用量依存性に鉄負荷HCV TgMの肝脂肪化を抑制した。肝脂肪化抑制の機序として鉄負荷HCV TgMにおけるミトコンドリアのβ酸化障害を抑制し、電顕的にもミトコンドリアの形態障害を抑制した。β酸化障害を抑制機構として、ミトコンドリア外膜に存在するβ酸化律速酵素であるcarnitine palmitoyl transferase I(CPTI)の発現を増加させ、活性酸素の産生を抑制した。一方、脂質合成を正に制御するsterol regulatory element-binding protein 1(SREBP1)を転写後性に活性化する小胞体ストレスには殆ど影響を及ぼさなかった。以上の成績から、SNMCは主として酸化ストレスに対するミトコンドリア障害を保護することで、鉄負荷HCV TgMの発癌過程に観察される肝脂肪化を抑制することが明らかとなった。わが国の大規模コホートにおいてC型慢性肝疾患患者に対するSNMCの肝発癌抑制効果も報告されており、その発癌抑制の一機序として、SNMCの酸化ストレスに対するミトコンドリア保護作用が重要と考えられた。
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