2010 Fiscal Year Annual Research Report
特発性拡張型心筋症の新しい治療法―迷走神経電気刺激法の開発
Project/Area Number |
20590853
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
鄭 燦 高知大学, 教育研究部・医療学系, 助教 (50443495)
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Keywords | 心筋症 / 迷走神経 / 電気刺激 |
Research Abstract |
特発性心筋症は、心機能障害を伴う原因不明の心筋疾患と定義され、主な治療の標的は心筋組織炎症の抑制と心不全の悪循環の防止である。現在、心不全の対症療法として主に薬物療法が行われているが、その予後改善効果は十分ではない。本研究では、特発性心筋症の病態において、免疫・炎症反応の調節系と循環調節系に重要な役割を果たす迷走神経活動が低下していることに着目し、迷走神経を直接電気刺激することによって免疫・炎症反応を抑制すること、それと同時に、破綻した自律神経系のバランスを是正させることで、心筋症ラットの心臓リモデリングを抑制し、心機能と長期生存率の改善を図ることを目的とした。平成22年度には、ラット自己免疫心筋症モデルを作成し、迷走神経の慢性的な電気刺激が心臓リモデリングや心機能に及ぼす影響を検討した。まず、豚の心臓から抽出したミオシンをラットに免疫することにより、自己免疫心筋症モデルを作成し、心エコー検査による心機能の変化を追跡した。免疫箇所には激しい炎症が発生し、免疫後3週目には心機能の低下(左心駆出率15~30%減)が確認できた。しかし、その後、炎症の治癒に伴って心機能も回復し、免疫後6週目の病理組織検査では心筋炎に特徴的な繊維の増殖は確認されなかった。今後、抗原の純化と免疫方法等を再検討し、より良い自己免疫心筋症モデルを確立することが課題である。一方、迷走神経刺激方法に関しては、長期刺激に適応した刺激電極の制作と実験動物への刺激装置の埋め込み方法を確立した。この方法を用い、ラット心筋梗塞モデルにおいて、迷走神経刺激が心筋梗塞急性期における致死性不整脈の発生を抑制し、また、梗塞部位の心筋幹細胞の数を有意に増加することを明らかにした。このような迷走神経刺激の心筋保護効果の機序を解明することは、さまざまの心疾患に対する新規治療法の開発につながる。
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