2010 Fiscal Year Annual Research Report
ギャップ接合リモデリングに伴う致死性不整脈の発生機序解明と治療戦略の確立
Project/Area Number |
20590860
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
本荘 晴朗 名古屋大学, 環境医学研究科, 准教授 (70262912)
|
Keywords | 致死性不整脈 / ギャップ接合 / スパイラル・リエントリー / 光学マッピング / 興奮伝導 / 湾曲効果 / 電気生理学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ギャップ接合を介する心筋細胞間電気結合の変化がスパイラル・リエントリーのダイナミクスに及ぼす作用を明らかにし、その制御による心室細動・頻拍に対する治療・予防技術を開発することである。本年度の研究では、細胞間電気結合の増強が心室筋における興奮伝導特性とスパイラル・リエントリーに及ぼす作用について、ウサギ摘出灌流心の活動電位光学マッピングにより検討した。 1. ギャップ接合チャネルの開口を促進するrotigaptide (0.1μM)は、心室筋の空間定数、平面波伝播速度と、興奮波の湾曲効果から求めた拡散係数を有意に増加し、心筋細胞間の電気結合を増強することが確認された。 2. Rotigaptid作用下で誘発した心室スパイラル・リエントリーでは、機能的ブロックの位置や方向が一拍毎に不規則に変化し、旋回中心が房室間溝と衝突してリエントリーが早期に停止した。このようなスパイラル・リエントリーの不安化には、興奮波湾曲効果の増強に伴う旋回中心付近での減衰伝導が重要な役割を果てしていた。 3. 解剖学的な興奮障壁に沿って旋回する興奮波では、rotigaptid作用下で高頻度ペーシングを加えると、障壁の先端から興奮波が解離(detachment)して、スパイラル・リエントリーの形成が促進された。 以上の結果から、心筋細胞間電気結合の増強は、心室における機能的リエントリーの旋回ダイナミクスを不安定化させ、細動・頻拍の停止を促進することが示唆された。しかし、心筋梗塞や線維化の著しい病態心では、細胞間電気結合の増強がかえって機能的リエントリーの形成を促す危険性があることも判明した。
|