2009 Fiscal Year Annual Research Report
血管新生における転写制御因子Idの役割に関する研究
Project/Area Number |
20590878
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西山 功一 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 助教 (80398221)
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Keywords | 血管新生 / Id / Notch / ライブイメージング |
Research Abstract |
平成21年度の研究においては前年度に得られた結果を受け、主に以下の2点に焦点を絞り研究を行った。 1.血管新生過程におけるId1の動的発現制御メカニズムについて:マウス大動脈片のタイプ1コラーゲン内3次元培養系やマウス胎仔脳内のin vivo新生血管において、新生血管内皮細胞におけるId1の核内発現強度は均一でなくその発現パターンは同一新生血管内でモザイク状を呈する知見がこれまで得られてきた。Notchシグナル下流のHLH転写因子であるHesは負の自己制御メカニズによりその発現が振動する事で形態形成過程を緻密に制御している事が知られている。従ってId1においても同様の発現調節機構があるかどうか、血管内皮培養細胞系を用いて検討した。その結果、血清刺激によいId1はmRNA、タンパクレベルにおいてその発現が周期的に振動する可能性が示唆された。また、Id1プロモーター解析から、分子の発現振動に必要な負の自己制御メカニズムが存在することが示唆された。我々がこれまで示してきたId1がNotch/Hey2シグナル経路を負に制御する機構と合わせて考えると、血管新生過程における動的なId1発現機構により時空間的なNotchシグナル制御を行い、それを介して血管形態形成を調節する新規血管新生モデルが考えられた。 2.動的血管新生評価・解析系の確立:これまでに、マウス大動脈片のタイプ1コラーゲン内3次元培養において、蛍光色素により核染色を行った後に、レーザー共焦点顕微鏡を用いて血管新生過程を4次元的に観察することで、血管形態形成時の内皮細胞の協調的細胞現象、特に細胞運動を可視化する実験系を確立してきた。この解析により、血管伸長時における血管内皮細胞は常にその相対的細胞位置を変化させ、その結果として血管構造が伸長していく事を見出した。これらはin vitroでの現象であるが、これまでの予想されてきた血管伸長時の血管内皮細胞の動きとはかなり異なっており、血管形成機構の既存の概念に大きな疑問を投げかけるきっかけになると期待される。さらに、それらの定性的細胞運動現象を定量的に評価できる解析系を構築した。現在同系用いて、Id1発現の動的変化が血管新生において機能的にどのような意義を持つか、協調的細胞運動の観点から定量的に検討している。
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