2008 Fiscal Year Annual Research Report
動脈硬化病変形成における細胞性免疫の関与とその制御による新規治療法の開発
Project/Area Number |
20590880
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
磯部 光章 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (80176263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 淳一 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (90313858)
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Keywords | 心臓移植 / クラリスロマイシン / 拒絶反応 / 血管狭窄 / MMP-9 / サイトカイン / 平滑筋細胞 / 慢性拒絶 |
Research Abstract |
心臓移植後、移植心では血管内に平滑筋と細胞外マトリックスを中心とする細胞で構成された新生内膜が形成され血管が狭窄する。マクロライド系の抗生物質であるクラリスロマイシン(CAM)のMMP-9の発現を制御作用に着目して、急性拒絶反応および移植心血管内膜肥厚に対する効果を検討した。 ドナーマウスBALB/cとレシピエントマウスC57BL/6の組み合わせ(MHC total allomismatch)は急性拒絶、C57BL/6 Bm12とC57BL/6との組み合わせ(MHC class II mismatch)は慢性拒絶の検討に用いた。異所性心移植を行い、レシピエントマウスにはCAM(100mg/kg)を1日2回、連日経口投与した。その結果、急性拒絶モデルにおいてCAM投与群では移植心の有意な生着の延長が見られた。CAM投与群では7日目の細胞浸潤、線維化面積は有意に減少していた。また慢性移植もでるにおいて血管狭窄の有意な減少が見られた。いずれのモデルでもCAMによる拒絶反応の軽減は炎症性サイトカインのmRNAの発現減少、MMP-9の発現抑制をともなっていた。J774.1細胞をIL-1βで刺激するとvehicle群では無刺激群と比べてMMP-9の強い発現が見られたがCAMの投与によってMMP-9のタンパク、mRNAレベルは減少していた。培養平滑筋細胞においてもCAM投与によりMMP-9発現が減少した。平滑筋細胞にPDGF-BB刺激を行うと細胞の顕著な増殖が見られるが、CAMを添加すると細胞の増殖は抑制され、細胞遊走評価分析でもCAMの投与により細胞の遊走が抑制された。 これらの結果は慢性拒絶で起こる移植片血管病変の進展をCAMが抑制する事、その効果はMMP-9の発現制御に関係していることを示すものである。CAMは急性拒絶も同様に抑制する。 以上より、CAMはMMP-9の活性を阻害する事により急性及び慢性拒絶を抑制する。クラリスロマイシンは免疫抑制作用を持たず、また一般臨床に安全に用いられている薬剤である。そのため移植後患者への適用が期待出来る。
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Research Products
(3 results)