2009 Fiscal Year Annual Research Report
喘息予備軍の発症要因に関する細胞内シグナルクロストークに基づいた多遺伝子同時解析
Project/Area Number |
20590902
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
吉川 貴仁 Osaka City University, 大学院・医学研究科, 准教授 (10381998)
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Keywords | 喘息予備軍 / 多遺伝子同時解析 / 気道過敏性 |
Research Abstract |
平成20年度は、将来の成人発症喘息のハイリスク群と考えられている<アレルギー性素因と無症候性気道過敏性>のある若年成人の被験者を募集し、その基礎データとともにDNAサンプルの収集を行なった。その結果、呼吸器症状のない一般大学生に広く参加を募り、合計261名の協力者からスクリーニングデータとDNAサンプルを得、その中で、アレルギー性素因を有する対象者(アレルギー疾患を有するか、血液検査で何らかのアレルギー素因を認めるもの)は189例、さらにそのうち、メサコリン吸入に対する気道過敏性閾値(PC_<20>)がアメリカ胸部疾患学会公認の過敏性陽性の閾値(8.0mg/ml)を下回るもの(無症候性気道過敏群)が72例(38%)、過敏性陰性例が117例であった。そこで、平成21年度は、この189例を対象に上皮増殖因子受容体(epidemal growth factor receptor (EGFR))とプロテアーゼ活性化受容体-1 (protease activating receptor-1 (PAR-1))遺伝子上の20個の候補SNPに関して遺伝子タイピングを行ない、これらの遺伝子の変異が無症候性気道過敏性の有無に影響するかに関して、ケース(過敏例72例)・コントロール(非過敏例117例)の比較研究を行った。PAR-1遺伝子に関してはケース・コントロール間で有意な差をもつSNP部位は存在しなかったが、EGFR遺伝子上ではイントロン上のrs4947972とrs12718945、エクソン上のrs2072454、rs2227983、rs2293347から構成されるハプロタイプブロックにおいて、その塩基変異パターンがケース対コントロールの間で有意な差を認めた。以上より、EGFRとPAR-1の2遺伝子間の相互作用は認められなかったが、EGFR単独でも、今回注目したアレルギー性素因と無症候性気道過敏性の有無を決定する要因となることを見出した。完成された有症状気管支喘息患者では、アトピーの有無や発作誘因(運動、アスピリン、アレルゲン、感染などの)、呼吸機能低下の進行速度、重症度、気腫性変化(COPD)の合併などの違う複数の形質(phenotype)がオーバーラップして、形質同士が相互に関係し合い、かつ患者毎にその形質の有無が不均一である。また、進行度に応じて関与する遺伝子数やその相互関係も増加し複雑になることも考えられる。従来の喘息の遺伝子研究は、このような患者群が一群として包括されて検討されてきたが、今回の研究では、完成された喘息患者のように様々な病像をまだ示しておらず、phenotypeも無症候性気道過敏性という一定の指標で定義できるため、遺伝子とphenotypeのつながりがより簡素化されて説明しやすい。このデザインで浮び上がったEGFR遺伝子はより早期の気管支喘息の出現のカギとなることが予想される。
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