Research Abstract |
EGFR-TKIを実際に投与した切除不能非小細胞肺癌症例における血清KL-6値測定の意義について,広島大学を中心とした多施設で検討を行った.登録された341症例の中で20症例にEGFR-TKIによる薬剤性肺障害を発症した.EGFR-TKIによる薬剤性肺障害を発症した20症例においては,治療開始前ならびにEGFR-TKIによる薬剤性肺障害発症時の血清KL-6の絶対値は,薬剤性肺障害の進展ならびに重症度を反映しなかった.しかし,治療開始前から薬剤性肺障害までの血清KL-6値の変化は致死的な症例とステロイド治療に反応する症例の鑑別に有用であった.次に,薬剤性肺障害を発症しなかった症例においては,EGFR-TKI投与前の血清KL-6値が500U/ml以上の症例では,500U/ml以下の症例と比較して,無増悪生存期間が優位に不良であった.さらにEGFR遺伝子変異を含めたサブグループ解析を行ったが,EGFR遺伝子変異を認めない症例であっても血清KL-6値が500U/ml以下の症例は,EGFR-TKI治療の適応となる可能性が示唆された. また,日欧の健常人ならびに慢性閉塞性肺疾患患者において血清KL-6値を測定し,その人種的な違いについて検討したが,日本人と比較して欧米人のKL-6値は明らかに高い傾向を認め,異なるカットオフ値の設定が必要であると思われた. また,肺癌細胞株約30株を用いて,MUC1遺伝子多型(rs4072037)と細胞表面でのKL-6の発現について予備的な検討を行ったが,KL-6の発現とMUC1遺伝子多型の関係を検討することが可能であった.今後は,血清KL-6値とMUC1の遺伝子多型,MUC1長の関係について臨床検体を用いて検討を行い,肺癌の人種的な差異を解明したい.
|