2009 Fiscal Year Annual Research Report
デフェンシンを新しい抗菌薬として開発するための基礎的研究
Project/Area Number |
20590927
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
迎 寛 University of Occupational and Environmental Health, Japan, 医学部, 教授 (80253821)
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Keywords | デフェンシン / 炎症性腸疾患 / 肺線維化 / 増殖因子 / サイトカイン / 肺線維芽細胞 / 気道上皮細胞 |
Research Abstract |
まず、今までに開発した各種デフェンシンのradioimmunoassayを用いて、クローン病などの炎症性腸疾患症例におけるデフェンシンの係わりを臨床的に検討した。クローン病などの炎症性腸疾患では健常者よりも特にαデフェンシン値が高値を示し、特に血漿値は疾患活動性や、CRPやTNFαなどの炎症反応と相関していた。これらの結果よりデフェンシンと炎症性腸疾患の関連性が示唆され、デフェンシンを「新しい抗菌薬」として臨床応用するためには、腸炎などの副作用が出現する可能性が否定できず、マウスなどの動物モデルにデフェンシンを投与することで腸に対する副作用を確認する必要がある。 また、われわれは今までにαデフェンシンと線維化との関連を検討してきたが、今回はin vitroにおいて様々な肺内細胞(気道上皮細胞、肺胞上皮細胞、肺線維芽細胞)を用いて、αデフェンシンによる増殖因子やサイトカインの産生の有無、またその細胞間での違いを検討した。上皮細胞ではαデフェンシンによってインターロイキン8の産生が強く亢進されるが、肺線維芽細胞ではインターロイキン8の産生は弱く、逆にTGF-βやVEGFなどの増殖因子の産生が強く亢進された。この様に細胞の違いによってデフェンシンの刺激により産生されるメディエーターの違いがみられた。これらの結果からデフェンシンが主に産生される場所(近隣に存在する細胞)の違いにより、病態(炎症に進んだり、線維化に進んだりする)が異なってくる可能性が示唆された。現在はαデフェンシンをマウスの肺内に注入した後の肺の組織学的変化を検討中である。
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