2008 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期の脱制御による肺上皮細胞の分化の破綻と癌化機構の解明
Project/Area Number |
20590928
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
藤本 哲広 Kumamoto University, 大学院・医学薬学研究部, 助教 (70359818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 隆明 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (70168392)
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Keywords | 肺腺癌 / 転写制御 / 細胞周期 |
Research Abstract |
肺の器官形成に必須の機能を有すると共に、肺腺癌の発症にも関与していると考えられている転写制御因子Nkx2.1/TTF-1がG1期の制御因子であるCDK4/6-Cyclin D1複合体と相互作用することを確認した。Nkx2.1/TTF-1によって発現が制御されるSurfactant proteir-C(SP-C)のプロモーター領域を用いたレポーターアッセイによる解析から、CDK4/6-Cyclin D1がキナーゼ活性非依存的にNkx2.1/TTF-1の転写活性化を抑制しうることが明らかになった。Nkx2.1/TTF-1は転写制御における機能ドメインとしてDNA結合領域であるホメオボックスと、二ヶ所の転写活性化ドメインが明らかになっている。そこで、これらの領域に対するCDK4/6-Cyclin D1の効果を検討したところ、N末端側に存在する転写活性化ドメインが、主たる作用部位であることが確認された。また、本研究の過程で、肺腺癌で発現の抑制を高頻度で認める転写制御因子RUNX3の機能が、Nkx2.1/TTF-1と同様にCDK4/6-Cyclin D1によって抑制される知見を得た(投稿準備中である)。 肺腺癌では、Cyclin D1の発現レベルの上昇が知られているが、本研究で得られつつある知見は、癌(特に肺腺癌)におけるG1期制御因子の発現量あるいは活性の亢進が、単に細胞周期の進行を促進するだけではなく、転写因子の機能を制御することによって、細胞分化を破綻させる可能性を示すものである。さらに、細胞周期阻害剤を用いることでこれらの転写制御因子の機能を回復させるという、新たな化学療法の可能性を開く意義を有するといえ、H21年度以降もさらに継続、発展させていきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)