2010 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期の脱制御による肺上皮細胞の分化の破綻と癌化機構の解明
Project/Area Number |
20590928
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
藤本 哲広 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (70359818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 隆明 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (70168392)
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Keywords | 細胞周期 / 転写制御 / RUNX3 / cvclin D1 |
Research Abstract |
本研究では、「組織特異的な発現パターンを示す細胞周期制御分子が、転写制御にも関与することによって、その組織の増殖と分化のバランスを保つ」という仮説を設定し、肺上皮細胞をモデルとしてその検証を行った。特に、転写制御における機能の抑制・喪失が細胞癌化に関与することが知られている転写制御因子に注目し、そのような分子と細胞周期制御因子の相互作用の生化学的・分子生物学的な解析を通して、細胞癌化における重要性の解明を試みた。モデルの検証に当たっては、まず、(1)その遺伝子の機能抑制によって肺上皮細胞分化に異常をきたす、かつ、(2)肺癌症例においてその発現もしくは機能の抑制が高頻度に検出される遺伝子である転写制御因子として、Nkx2.1とRUNX3に注目し、肺癌で発現レベルの腿が効率に検出されることが報告されている細胞周期制御分子cyclin D1との相互作用の可能性を生化学的に検討した。興味深いことに肺腺癌細胞株であるA549において、Nkx2.1あるいはRUNX3とcyclin D1は蛋白質複合体を形成していることが明らかになった。そこで、レポーターアッセイをおこない、cyclin D1のNkx2.1やRUNX3による転写活性化に対する効果を検討したところ、cyclin D1は容量依存的に転写活性化を阻害し、この転写阻害にはcdk4/6の活性化を必要としないことが判明した。そこで、特にRUNX3に着目し、どのような機構で転写活性化を阻害しているのか、クロマチン免疫沈降法によって検討した。その結果、cyclin D1が、RUNX3とcoactivatorであるp300の複合体形成ならびに、p300によるRUNX3のアセチル化を阻害することを明らかにしえた。これは、細胞周期を制御する分子が転写制御に関与し、その異常が細胞癌化に深く関与することを示すものであり、従来知られていなかった概念を提起した点で意義が深いといえよう。
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Research Products
(2 results)