2010 Fiscal Year Annual Research Report
気管支喘息患者のIL-13遺伝子変異と気道リモデリング
Project/Area Number |
20590933
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
中村 豊 岩手医科大学, 医学部, 講師 (60328614)
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Keywords | アレルギー / 遺伝子 / ゲノム / 細胞・組織 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
岩手医科大学病院喘息外来通院中の気管支喘息患者で、口頭と文書による同意が得られた患者336名から末梢静脈血を採取しリンパ球のDNAを抽出、IL-13の110番目のアミノ酸がアルギニンからグルタミンへ変異しているIL-13(Q110)の患者群と、変異のないワイルドタイプIL-13(R110)の患者群とに分けて1年間の観察期間を置いた後に肺機能、気管支粘膜上皮基底膜の厚さ、気管支洗浄液中の各種メディエーター濃度をそれぞれ測定し群間比較した。その結果IL-13(Q110)患者はIL-13(R110)患者に比し、有意に肺機能が低下し気管支粘膜上皮基底膜も肥厚しており、さらに気管支洗浄中のIL-13、IL-23、CCL-8、CSF-2、ヒアルロン酸など、これまで喘息患者の気道リモデリングに関係すると報告されている各種メディエーターの濃度が有意に高値であった。次にIL-13(Q110)患者群を2つのグループに分け、すなわちこれまでの治療を継続するグループと高用量吸入ステロイドを上のせして治療をするグループとに分け1年間の治療をそれぞれ行った。1年後の肺機能検査において高用量吸入ステロイド上のせグループでは、従来の治療を継続したグループに比し有意に改善していた。基底膜の厚さは有意に薄く気管支洗浄液中の各種メディエーター濃度は有意に低下していた。これらの結果から、IL-13(Q110)は喘息患者の肺機能低下を来たす1つの遺伝的要因と考えられ、さらにその治療法が示された点で意義がある。外来において気管支喘息と診断し同時に遺伝子型を同定することにより、たとえ軽症であっても早期から高用量吸入ステロイドを投与することで肺機能低下を未然に予防できる一つの可能性を示した点で重要である。
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