2010 Fiscal Year Annual Research Report
悪性胸膜中皮腫の細胞・分子生物学的解析と癌幹細胞の同定
Project/Area Number |
20590935
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Research Institution | Hyogo College of Medicine |
Principal Investigator |
藤盛 好啓 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (20229058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 孝司 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10155781)
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Keywords | 中皮腫 / 癌幹細胞 |
Research Abstract |
悪性胸膜中皮腫は、胸膜中皮細胞に由来する予後不良の悪性腫瘍である。アスベスト曝露後約40年で発症し、多段階に遺伝子異常が蓄積され発症すると推定される。本研究では、悪性胸膜中皮腫の細胞学的・分子生物学的解析を行い、癌幹細胞の同定をめざした。 癌幹細胞の同定過程において、我々は中皮腫細胞にCD318が発現されているのを見出した。CD318は造血幹細胞、間葉系幹細胞に発現されていることが知られている。また、中皮腫細胞は、Oct-3やSSEA-4など、ES細胞マーカーを発現していた。中皮腫細胞は幹細胞に近い性格を有していることが明らかとなった。しかし、現在までの検討では、特定のマーカーと幹細胞活性とに関連は見られていない。継続して検討する。中皮腫細胞は一般に抗癌剤によるアポトーシス誘導に抵抗し、このことにより抗癌剤による治療に抵抗性する。我々は、亜ヒ酸(As_2O_3)を用い、中皮腫細胞株(H2052)にcaspase-3依存性にアポトーシスを誘導し得た。この過程においてJNKが活性化され、さらにERKの活性化が惹起されることを明らかとした。JNKはcaspase依存性にアポトーシスを引き起こし、ERKはJNKとのcross talkを介してcaspase非依存性アポトーシスを起こしていた。一方、H28細胞株はFynを欠損しており、亜ヒ酸でアポトーシスを起こさず、Src阻害剤PP2でアポトーシスを誘導できた。このように腫瘍細胞がアポトーシスを誘導する、あるいは抵抗する機序を明らかにし、効果的にアポトーシスを誘導して抗腫瘍効果を促進することが、中皮腫の治療戦略上重要である。
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