2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ粒子による肺障害の解明と有害性評価システムの構築
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20590939
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
森本 泰夫 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (30258628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
明星 敏彦 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (00209959)
橋場 昌義 熊本大学, 産業生態科学研究所, 専門修練医 (90566431)
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Keywords | 化学物理 / ナノ材料 / 遺伝子 / 細胞・組織 / 病理学 |
Research Abstract |
1)酸化ニッケルナノ粒子凝集体の肺炎症能を検討するため、酸化ニッケルナノ粒子凝集体曝露モデルを作成し、好中球炎症とそのケモカインの検討を行った。酸化ニッケルナノ粒子の物理化学的特性は、比表面積:104.6m^2/g、比表面積径8.41nm、公称径20nm、純度99.8%であった。生理食塩水に懸濁し、microtrac FRAによる懸濁液中の凝集径1.34μmであり、凝集レベルはミクロンサイズであった。この酸化ニッケルナノ粒子1mgをWistar系雄性ラット9週齢に、単回注入、対照群としては生理食塩水を注入した。注入後3日、1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後に解剖を行った。観察期間を通して肺組織において、好中球や肺胞マクロファージを中心とした炎症細胞浸潤を認め、好中球ケモカインであるCINC-1、2、3の持続的濃度上昇を認めた。以上より本試験において、酸化ニッケルナノ粒子凝集体は、好中球を中心とした炎症能を持つことが認められた。 2)工業用ナノ材料には、多層や単層のカーボンナノチューブのように繊維状物質も含まれるが、アスベストに代わる有害性評価のコントロール繊維はない。この評価繊維としてチタン酸カリウムウィスカを用いた。チタン酸カリウムウィスカの物理化学的特性は、幾何平均径が0.35μm(1.6)、幾何平均長さが4.4μm(2.7)であった。この繊維を生理食塩水に懸濁し1mg,2mgをラットに気管内注入し、酸化ニッケル粒子と同様に観察期間を3日から6ヶ月おき、好中球浸潤とケモカインの検討を行った。チタン酸カリウィムウィスカ注入群において、好中球を中心とした肺の炎症や酸化的ストレスの指標であるHeme oxygenase-1 (HO-1)の上昇が、持続的に認められた。しかし、観察期間とともに軽減傾向を示した。 以上の結果から、上記の気管内注入試験は、工業用ナノ材料の有害性試験として有用であることが示唆された。
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